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ある日突然、子供が「虫」に変身したらどうする?

人間に向いてない

 暑くてあまり小説なんか読みたくない日の午後、たまたま手にした本書『人間に向いてない』(講談社)。「第57回メフィスト賞」に満場一致で決定、というキャッチにひかれて読み始めたら、やめられなくなってしまった。ある日、息子が突然「虫」になってしまった母親が主人公の物語。グロテスクな感触が伝わり、本を閉じたいのに止まらない。「これはカフカ『変身』のパロディか?」とか、「こんなこと書いて大丈夫なのか?」とハラハラしながら2時間ほどで読了した。

 ネタバレにならない範囲で、ストーリーを要約すると。一夜のうちに人間を異形の姿に変貌させる「異形性変異症候群」が、10代、20代の「ひきこもり」の若者に蔓延する。政府は致死性の病と判断、「異形性変異症候群」と診断されると、患者は死亡したこととなり、家族は死亡届を出さなければならない。しかし、主婦の美晴は22歳の息子、優一が芋虫のような姿になっても「処分」することは出来なかった。処分を迫る夫との溝が深まり、救いを求めたのが患者団体「みずたまの会」だった。

 会で知り合った若い女性、津森の娘は、さながら「人面犬」のようであり、他の患者は植物の体裁だという。外見はさまざまでも社会からは偏見の目で見られ、身内からも迫害を受けている点では共通していた。

 ここまで読み、これは現実にあったある疾患と社会との相克をモチーフにした小説なのかと思ったり、患者団体の派閥争いや不穏な雰囲気にシリアスなミステリーかと想像したり、ともかくページを繰る手が止まらない。「メフィスト賞」作品だから、なんでもありかと、気分を落ち着かせ終段のグロテスクな感触にがまんしながら読み進め、意外な結末に驚愕した。

 どうして息子が「虫」に変身したのか悩みながらも、ともかく異形の息子を愛し、守る母親が救いだ。当然、異形の子どもを受け入れることが出来ず、「処分」したり殺したりする親もいる。これも何かの比喩かともやもやした気分で読了。「悪夢」か「救い」か、どちらの読書体験となるかは、人それぞれだろう。「メフィスト賞」からまたおそるべき新人が出現したことだけは確かだ。  

  • 書名 人間に向いてない
  • 監修・編集・著者名黒澤いづみ 著
  • 出版社名講談社
  • 出版年月日2018年6月14日
  • 定価本体1500円+税
  • 判型・ページ数四六判・335ページ
  • ISBN9784065117583

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