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20年前のW杯日本代表メンバーがいま思うこと

日本代表を、生きる

 サッカーW杯ロシア大会が始まった。4年に一度のお祭りに世界中がわいている。参加するのは、大陸別の予選を勝ち抜いた各国と開催国ロシアの32チーム。決勝は7月15日。優勝トロフィーをかけた祭典は約1か月間にわたって続く。

 予選を突破し本大会に出場するのは決して簡単ではない。W杯は1930年に始まったが、日本代表の初出場は16回目の1998年フランス大会だった。93年のJリーグ発足から5年。ようやく実現したW杯出場に、当時は日本中が熱狂した。しかし、1次リーグで0勝3敗。世界の壁の厚さを思い知らされる結果となった。

 フランス大会の惨敗の現場で何が起こっていたのか――それを日本チームの監督・選手、トレーナーらから聞き書きしたノンフィクションが「6月の軌跡――'98フランスW杯日本代表39人の証言」(1998年、文藝春秋/ミズノスポーツライター賞受賞)。それから20年。本書は2001年に文庫化されている『6月の軌跡―'98フランスW杯日本代表39人全証言 』(文春文庫」の続編になる。「6月の軌跡」に登場した人物に、改めてインタビューし、それぞれにとってのフランス大会の「重み」を描きだした力作である。

 いずれも、スポーツライター増島みどりさんの作品だ。略歴によると、増島さんはスポーツ紙記者を経て、97年にフリーになった。サッカー、野球などさまざまな種目で精力的な執筆を続けている。

 本書では、20年前にインタビューした一人ひとりを探し出し、連絡をとるところから描かれる。当時の監督・岡田武史や中山雅史、井原正巳、名波浩ら有名選手らとの再会にいたるには、様々ないきさつ(所属チームや団体の広報担当者とのやりとり、日程調整など)があり、またツイッターでようやく探し出せた人物もいた。その途中経過が、取材相手の「いま」を映し出している。

 取材相手には、監督・選手らだけではなく、ドクター、トレーナー、コック、栄養士ら裏方のスタッフも含まれている。その多彩な顔触れに驚かされる。

 増島さんは「(改めて取材をして)今回、依然現役選手として、また(Jリーグチームの)監督、クラブのスタッフ、指導者、解説者として、1人もサッカーを離れていない事実に圧倒されました」と語っている。

「自分で打ってよかったんでは」

 フランス大会でのピッチでの様子はいまも生々しく語られている。例えば次のようなくだりがある。

 「自分では思い切りダッシュしたはずなのに、腕一本でかるーく止められた瞬間があった」(城彰二)

 「中央を走ってきた(フォワードの)呂比須(ワグナー選手)にパスを出したプレーです。当時はそれが正しいと思いましたが、自分で打ってよかったんでは・・・」(中西永輔)

 「ボールの扱い、読みは十分通用すると感じた。でも、守備は国際基準になってなかった」(名波浩)

 ただ、彼らは「その瞬間」を懐かしがっているのではない。胸に刻んだ当時のプレーを踏み台に「いま」を生きている。さらなる技術のレベルアップのために海外チームに移籍したり、あるいは、地域のチームで子供たちの指導をしたりしている。その歩みは、20年前のフランス大会の経験が、日本のサッカーのレベルアップ、若手の育成につながっていることを物語っているといえるだろう。

 さて、日本代表は、フランス大会以来、2002年日韓大会、06年ドイツ大会、10年南アフリカ大会、14年ブラジル大会と出場し戦績は4勝4分9敗。今年のロシア大会で6回連続になる。

 ロシア大会での日本代表の試合(1次リーグ)日程は、19日コロンビア戦、25日セネガル戦、28日ポーランド戦。6回目ともなれば、決勝トーナメント進出を当然期待したいところだが、しかしいま、「(進出の)チャンスはないだろう」(トルシエ・元日本代表監督)と悲観的な見方が強い。対戦相手との実力差がありすぎる、との評判がもっぱらなのだ。「まずは1勝を」と願っているファンも少なくないに違いない。でも、やきもきできるのも貴重なことだ。

 増島さんはあるラジオ番組で、こうも語っていた。

 「イタリアは今年、予選で敗退して出場していない。顔見知りのイタリアのテレビマンが、『こんなつまらないことはない。今回は日本を応援するよ』と言っていた。自分の国が出場しているW杯をあれこれ語れるのは、世界でたった32か国の特権なんです」

 こんな機会を楽しまない手はないだろう。

  • 書名 日本代表を、生きる
  • サブタイトル「6月の軌跡」の20年後を追って
  • 監修・編集・著者名増島みどり 著
  • 出版社名文藝春秋
  • 出版年月日2018年6月10日
  • 定価本体1750円+税
  • 判型・ページ数四六判・309ページ
  • ISBN9784163908458

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