このBOOKウォッチで紹介する本は、新刊書が対象(日曜日掲載は既刊本)なので、出版社からの献本や書店で仕入れるものが多い。しかし、それだけではどうしてもカバーしきれない。そこで図書館の出番となる。図書館でしかお目にかかることの出来ない種類の本が確実に存在するのだ。
という訳で、図書館には日頃たいへんお世話になっているのだが、本書『司書のお仕事』(勉誠出版)を読んで、図書館で働く司書さんたちの仕事について初めて知ったことが少なくない。
ある公立図書館に新人司書として採用されたばかりの稲嶺双葉が、先輩司書たちの指導を受けて成長してゆくストーリーの小説仕立てで、司書のさまざまな仕事が解説される。
図書館でのんびりと仕事をしていると思われがちだが、司書は実に忙しい。開館前には新聞の受け入れと返却ポストの確認をしなければならない。
カウンター業務など一部の仕事は図書館運営会社に委託している図書館も少なくないが、それでも蔵書目録の作成や本の受け入れ作業、イベント企画など、仕事はいくらでもある。
本の背表紙のラベルに印刷された数字の記号がある。NDC分類(日本十進分類)と呼ばれるものだ。図書館運営会社の司書が付けた分類が間違っていたので、新人の双葉が先輩に注意されるという場面もある。
ライトノベル風のマンガのイラストがあしらわれた表紙を見て、いまはやりの「お仕事小説」かと思って読み始めたら、相当に専門的な内容なので驚かされた。著者の大橋崇行さんは、東海学園大学人文学部准教授でもある作家・文芸評論家。図書館司書の資格を得るための司書過程で学ぶ学生に教えているが、司書の仕事をわかりやすく紹介した本がないので執筆したという。
ところで専門職としての司書の仕事の「花形」は、レファレンス・サービスだという。調べもののお手伝いだ。インターネットによる検索が進んだ時代になっても、図書館のレファレンス・サービスの役割は重要だ。
本書の中で図書館長はその意義をこう語っている。「司書は専門的な情報検索をすることができるプロだということです」「司書は図書館で契約しているデータベースや、紙で印刷されている辞書を使って、より正確な情報を、できるだけ短い時間で利用者に提供する。あるいは利用者と一緒に検索する。それによって市民が困っている問題を解決することができる」
本を借りるだけでなく、レファレンス・サービスを一度利用してみよう。図書館の役割や意味について考えるヒントに満ちた本だ。
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