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松田聖子、昭和最大ヒット曲は「ガラスの林檎」の意外

詞と曲に隠された物語 昭和歌謡の謎

 現代のカルチャーシーンのさまざまなところで「昭和」が見直されている。とくに「昭和歌謡」をめぐっては、それを伝説としてしか知らない平成生まれの若者らにも受け入れられ、かつての懐メロブームとは違い単なる復活以上の定着感がある。

 本書『詞と曲に隠された物語 昭和歌謡の謎』(祥伝社)は、昭和の時代を彩った数々の楽曲を取り上げ、当時ヒットした秘密、平成に入っても忘れ去られることなく支持を集める理由を解き明かしたもの。昭和歌謡と同様、世代を超えて楽しめる一冊。

「天城越え」は忘れ去れる寸前だった

 NHKで毎週火曜夜にオンエアされる歌番組「うたコン」は毎週、昭和の色が濃い。「リズムにのって!心躍る昭和歌謡」(4月17日)や「昭和・平成 時代を超える 歌姫スペシャル」(5月8日)など、テーマに掲げられることもしばしば。そうした特集ではなくても、本人が登場して、あるいはカバーで、毎週の放送でさまざまな昭和の歌がプログラムされている。

 テレビの昭和歌謡モノはとくにBSでは各局で番組編成に組み込まれており、「懐かしさ」をウリにするはずの歌手も露出頻度が増えて、懐かしさより親しみ感を増している。Jポップが登場した平成生まれの若者たちは、カラオケネイティブでもあり、子どものころから家族で出かけ、両親らの歌で昭和歌謡に親しみ、音楽ジャンルの一つとしてもてはやされるようになったものだ。

 本書の著者、合田道人さんは1979年、高校在学中にシンガーソングライターとしてデビューし、その後、音楽番組の構成、作詞作曲をするなどして音楽畑を歩んでいる。歌謡界についても著作も多く「紅白歌合戦」に詳しいことでも知られる。本書では、現代の昭和歌謡番組でもしばしば歌われる「贈る言葉」「瀬戸の花嫁」「長崎は今日も雨だった」など、歌い継がれたからこそ分かった謎や不思議がある19曲について解説している。

 平成の時代が深まるのにつれて昭和歌謡の存在感を高める原動力になったのは紅白歌合戦らしい。平成になってすぐに「21世紀に伝えたい歌」という形がとられるようになり、過去のヒット曲で出場する歌手が増え、昭和メロディーは決まり事になった。著者は「その年を代表するヒット曲が少なくなってきたという理由もあろうが『紅白』はここ十数年で完全に違うものになった」と指摘する。

 その代表例は石川さゆりさんだ。2017年の大晦日に40回目の出場を果たしたが、そのうちの半数で「天城越え」と「津軽海峡・冬景色」を交互に披露。2曲とも石川さんの代表曲には違いないのだが、「津軽海峡―」が発売当初73万枚近くを売り上げたのに対し「天城越え」は5万枚足らずで、実は忘れ去られようとしていた1曲だったという。それがなぜ、紅白のトリを飾る楽曲にまでなったのか。その復活のストーリーは、平成の時代ならでは展開で興味深い。

「赤いスイートピー」を30万枚上回る

 松田聖子さんは昭和~平成を通じて人気が衰えることがない歌手の一人で、数多くのヒット曲を持つ。聖子ちゃんカットで親しまれた昭和時代「青い珊瑚礁」「赤いスイートピー」「渚のバルコニー」など50万枚を超えるセールスも珍しくない。聖子さんのレコード売上歴代1位は、平成になってからの「あたなに逢いたくて~Missing You~」(1996年、平成8年)で、2位は、1983年(昭和58年)発売の「ガラスの林檎」。著者は1位が平成の曲であることを「意外」としているが、それ以上に首をかしげたのは2位の方だ。

 「ガラスの林檎」は、歴代2位だが、昭和では1位。売上枚数は85万枚に達し、「青い珊瑚礁」を25万枚、「赤いスイートピー」を30枚以上上回った。「前作の『天国のキッス』の倍近い売れ方をした歌だったろうか」。そう考えた著者が理由を追跡。確かに、聖子さんのほかのヒット曲と比べたらタイトルから楽曲が浮かばない。著者の報告を読んで大いに納得した。詳しくは本書をお読みください。

  • 書名 詞と曲に隠された物語 昭和歌謡の謎
  • 監修・編集・著者名合田道人
  • 出版社名祥伝社
  • 出版年月日2018年5月 1日
  • 定価本体860円+税
  • 判型・ページ数新書・296ページ
  • ISBN9784396115371
 

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