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社長が大間違いするIT投資、こんな実例アリ

全社員生産性10倍計画

 現代のテクノロジーの進化は加速度的で、最新だったものがあっという間に陳腐化してしまうこともある。だからこそITをめぐる投資しだいで企業の先々が大きく変わる。本書『全社員生産性10倍計画』(クロスメディア・パブリッシング)は、これまで300社以上の経営の現場を見てきたというコンサルタントが「正しいITへの金のかけ方」を示したもの。

 IT投資がうまくはまれば「儲かる」ようになるばかりでなく、社員らの「働き方改革」にも大きくプラスになるという。

コスト増嫌がり低下するコスパ

 著者はIT関連企業で従事してきたECコンサルティングの仕事を通じて、多くの経営者がITでムダな投資や、誤った投資を行っているのを目の当たりにしてきた。その積み重ねのなかから、企業が気づいていないテクノロジー面での課題解決を担う「IT顧問」のような存在の潜在的ニーズがあることが分かり、コンサルティングサービスの会社を起こしたものだ。

 「いまやITの活用は、経営戦略のおける重要な柱の1つになっている」時代なのだが、そのあたりをきちんと分かっている経営者は多くはなさそうなのだ。業者にいわれるままにシステムを導入していたり、更新期をとっくに過ぎているのにまだ使えるからとそのままだったり、そもそもITに金をかけるのはムダと従業員の作業に頼って節約した気になっている例もあるという。

 ところが「ムダ」と思って投資を惜しみ、時代に合わない旧式モデルを使い続けていると、表面化しないところで逆にムダが積み重なっていく。著者が挙げる例の1つは、社長がコスト増を嫌がって従業員が使うパソコンの更新しないまま業務を続けさせると――というもの。

 社長が会社でパソコンを使うといえばメールかインターネットの利用のほか、スケジュール管理のツールを使う程度がせいぜいである一方、従業員は非常に多くの細かい作業をたくさん行っている。「たとえばソフトウエアの起動に10秒多くかかる、メールを開くのに3秒多くかかる......このような時間でも、積もり積もれば1日30分や60分のロスになる」と著者。「このせいで毎日の残業がプラス1時間、1か月で20時間増えたとしましょう。その20時間分の残業代で、実は最新式のパソコンが買えるという場合も多いのではないでしょうか」。

 ほとんどメールやインターネットでしかパソコンを使わない社長にはパソコンが劣化してきたことがなかなかわからない。ITに自信がない経営者ほど「現場の声を聞け」と著者はアドバイスを送る。

メール添付で文書共有はもう古い

 少し前までは、システムの導入などIT系の投資といえば高額な資金をまとめてドンとつぎ込む方式で初期費用が高く保守にもさまざま出費がつきまとうものだった。そうしたIT投資をした経営者はおうおうにしてそこでストップしがちという。従業員パソコンの例のように時間がたつと合理化から逆方向に進むことになる。

 会社の事務ではあたりまえのように行われているドキュメント共有。サーバーに共有ファイルを保存したり、メール添付によるやりとりが中小企業などでは主な手段だろうが著者は、いまやそんな時代じゃないときっぱり。クラウドを使えばコスト削減のほか、処理速度もアップ、複数人のアクセスも可能になると紹介している。

 IT系の投資はリスク管理にも欠かせない。インターネットで自社やライバル他社の評判をウオッチすることは経営の面からも非常に重要という。現代では情報はあふれておりモニターのためには専用の高スペックマシンが必要かもしれない。

 「あなたの会社がどのようなことをいわれているのかぜひ知ってください。よく思われているのか、悪い印象を持たれているのか。何かいわれてしまっていたら、何が原因なのか、インターネットをよく観察していればつぶさに見えてくるはず。商品の善し悪しによるものなのか、社員の振る舞いのせいなのか、他社と比べての優劣によるものなのか。ときには、ウソの情報が根っこになっているかもしれません」

 加えて著者は、たかが評判と侮ってはいけないと述べている。

  • 書名 全社員生産性10倍計画
  • サブタイトル1人500円かければ、会社は儲かる!
  • 監修・編集・著者名本間卓哉
  • 出版社名クロスメディア・パブリッシング
  • 出版年月日2018年5月29日
  • 定価本体1480円+税
  • 判型・ページ数B6判・222ページ
  • ISBN9784295400899

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