麻雀をやったことがある人なら「20年間無敗」ということがどういうことか分かるだろう。「ありえない」「ウソ」と反応する人も多いだろうが、事実、そうだったのが本書『究極の選択』(集英社新書)の著者、桜井章一さんだ。
桜井さんは雀鬼(ジャンキ)の異名を持つ伝説の雀士。かつては裏社会の麻雀でヤクザや会社社長の代打ちとして麻雀を打ち、いくつもの修羅場を潜り抜け無敗を誇った。今は現役を引退し、雀鬼会という団体を設立、麻雀を通し独自の人生哲学を伝える啓蒙活動を行っている。阿佐田哲也原作の映画『麻雀放浪記』に麻雀の技術指導として参加。『努力しない生き方』『人を見ぬく技術』などの著書がある。
麻雀は選択のゲームである。どの牌を残し、どの牌を切るか。その選択の積み重ねで勝敗が決まる。また全体の流れをつかむことも大事だ。その麻雀で「無敗」の実績をもつ桜井さんが、進学、就職、ビジネス、結婚など43の人生の難問に答えたのが本書だ。その中からふたつだけ問答をかいつまんで紹介しよう。
Q 売春はいけないことなんでしょうか? A 人間には性欲という欲がある。エロは人類の生存に欠かせない。ただエロは相手のいることなので、「やりたいときにやる」というわけにはいかない。そこで売春のような商売が必要になってくる。本能に則った需要と供給の関係が成り立っているので、生物としてはあながち間違っていないのではないだろうか。もしかしたら「生きるため」に売春をせざるをえない人がいるかもしれない。そういう人たちを「汚い商売をしやがって」と責めることはまったくできないと思う。ましてや、今では風俗店が従業員の住居や育児のセーフティネットになっているケースすらあるわけで、こうした事実もちゃんと見ないといけないだろう。
Q 日本社会に根強い体育会的な管理指導は本当によい結果を生むのか? A 人を管理しているのは会社だけではない。学校でも親子関係でも、上の立場にある者が下の者を精神的に支配する構図は至るところに見られる。みな当たり前に思っているが、世界の中では異質ではないだろうか。日本の教育や指導においてしばしば目にするのは、「厳しさ」の正体が力を持つ者の単なる「支配欲」だったりすることだ。強い支配による抑圧の中では本当の「自立心」は育たないから、伸びしろが小さくなってしまうのである。下の者を従わせるために暴力だけに頼るような「ただ厳しい」だけの教育では、本当の精神の強さは育まれない。 間違った厳しさを与え続けられると、生きることに否定的になったり、精神を病んでしまったりと、やがて必ずその副作用が現れる。多くの人が「本当の厳しさとは何か?」に気づけば、きっとその厳しさを楽しむことができるようになるだろうし、「本当の強さ」や「自立から得る真の自由」というものを肌で実感できるようになるだろう。
危険タックル問題でゆれる日大フットボール部で「暴力」が横行していたとは思えないが、少なくとも精神的に監督、コーチら上の立場の者が選手を支配していたことはうかがえる。桜井さんなら、きっと思いがけない方法で彼らを指導し、部を「再生」するに違いない。そんな本当の「強さ」を感じさせる人生訓に満ちた本だ。人生の岐路で選択を迫られる人の参考になるだろう。
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