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吉祥寺は本当に住みやすい街なのか!

住みたいまちランキングの罠

 不動産会社などが発表する「住みたいまちランキング」はここ数年、上位を吉祥寺、恵比寿、横浜が占めている。はたしてそれは妥当なのか、と本書『住みたいまちランキングの罠』(光文社新書)の著者、大原瞠さんは疑問を呈している。

 吉祥寺のある東京都武蔵野市、東京都足立区、神奈川県川崎市、千葉県浦安市、この中で一番安全な街はどこだろうか、と読者に質問をつきつける。人口1万人当たりの刑法犯認知件数(2017年)は、少ない方から川崎市、足立区、浦安市、武蔵野市の順となる。川崎市は55.7人で武蔵野市の116.7人の半分なのだ(政令指定都市の中でも川崎市は少ない方で大阪市は180.5人)。高級住宅地のイメージのある吉祥寺だが、決して安全な街とは言えないことが分かる。むしろ家賃は高く、来街者が多く混雑しているため、住みやすいとも言えないようだ。こうしたランキングは、回答者のイメージで順位が決まる傾向にあり、現実を反映していないと行政評論家で著者の大原瞠さんは指摘する。

 待機児童問題が深刻になり、「子育てしやすい」街であることを各自治体が競って宣伝するようになったが、これにも落とし穴があるという。認可保育所に誰を入れるかは自治体が決めるが、最終的には世帯収入が低い方が入りやすいそうだ。保育園付きのマンションに入ったものの所得チェックではねられ、マンション住民の子どもは通えないということが起こりうるというのだ。「保育は福祉事業だ」というのが行政の立場なのだという。著者は「認可外保育施設は高かろう、悪かろうという偏見を信じない人が得をする」と常識を疑うことを勧める。

 さらに「マンションは買った方が得」という常識にも異議を唱える。買った場合、売却価格と税金・管理費などの「隠れ家賃」という不確定要素があるため、賃貸より必ずしも得と言い切れないと指摘する。以前、本欄で紹介した『マンションは学区で選びなさい』(小学館新書)のように、マンションを買い替えることによってステップアップできる人は恵まれたごく一部の人のようだ。

 人々が「住みたいまち」に関するさまざまな呪縛から解放され、行政はごみ清掃工場の修繕など本当に必要な場所に予算を配分するようになってほしい、という著者の主張はもっともだ。人気投票を主催しているのはたいがい、マンション販売で益を得る不動産関連業界なのだから。

  • 書名 住みたいまちランキングの罠
  • 監修・編集・著者名大原瞠 著
  • 出版社名光文社
  • 出版年月日2018年3月20日
  • 定価本体820円+税
  • 判型・ページ数新書判・237ページ
  • ISBN9784334043438

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