昨年(2017年)は、橘木新さんの『定年後』がベストセラーになるなど、定年や老後の本があいついで出版された。今月(2018年3月)出たばかりでランクインしそうなのが本書『定年入門』(ポプラ社)だ。著者の高橋秀実さんは、『からくり民主主義』などの著書をもつノンフィクション作家。結論を急がず、じっくり話をきくインタビューの手法に定評があり、本書でも多くの人が定年後の生活について本音を語っている。
インタビューの合間に、どきっとするような1行がある。「定年後の男性にとって、図書館は新たな勤務先のようである」。確かに平日の図書館は彼らのオアシスかもしれない。時間つぶしが出来る上に、居心地も悪くない。だが、時折クレーマーと化した老人を見かける。著者は「定年後の人がますます増えると、図書館は昔ながらの会社になってしまうのではないだろうか」と心配する。
ユニークな人を紹介している。退職してから外出時には和服に雪駄、自宅から6駅先までの定期券を買い、毎日居酒屋へ出勤する男性(69)がいる。「野鳥の会」の会員でもあり、「野鳥は本当に時間がつぶれます」と喜々としている。
カルチャーセンターは、女性の社交の場にもなっているが、男性も少なくない。「カルチャーに通って、人生が180度変わりました」という独身男性(67)は、講座で知り合った女性と、定年後に初恋をしたとのろけている。
夫が家にいることで妻が感じるストレスは大きくなるという。そういう問題はないと言い切る夫婦の場合、夫と妻は日中、1階と2階で「別居」していた。
海外への単身赴任が長かった夫の退職とともに、ある夫婦は東京から宇都宮に引っ越した。「引っ越して新しい場所でスタートすれば、お互いゼロですから、一緒にスタートできるじゃないですか」と新しい土地でも生活を楽しんでいる。
この手の本にありがちな、こうしなければならないという堅苦しさがまったくない。いろいろな定年のありようがあることを知り、気持ちが少し楽になるだろう。
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