『去年の冬、きみと別れ』は、13年に幻冬舎から単行本として刊行され、16年に文庫化された。累計25万部を突破した。中村文則によるサスペンスの傑作との呼び声高く、目の肥えた書店員たちに「この小説は化ける」と言わしめたという。
カメラマンの木原坂雄大は、2人の女性を殺した罪で死刑判決を受ける。ライターの「僕」は、編集者から彼についての本を書かないかと打診され、木原坂に面会に行く。「僕」は雄大の姉・朱里をはじめ、彼の関係者に次々と接触するのだが、全員どこか歪んでいる。
「僕」は、獄中の雄大と手紙の交換を始める。雄大から、「僕」以外にもう1人、彼の本を書こうと手紙を送ってくる人物がいると、知らされる。さらに「あの二つの事件は、僕のせいじゃないんだ。彼女達が悪いんだよ」と、打ち明けられる。事件の真相に迫る過程で、事件の関係者全員に漂う異様さに、「僕」は飲み込まれそうになる。
本書は、「M・Mへ そしてJ・Iに捧ぐ。」の献辞が記されている。途中に11の資料が挟まれている。「僕」の視点で綴られているが、それはライターの「僕」だけではない。読み進める中で生まれる数々の疑問は、物語の最後に集中して解かれることになる。ただ、1度読んだだけで全てを理解するのは難しい。そして最終行を読み終えた時、おそらく読者全員が、最初のページに戻って確認することになるだろう。
著者の中村文則は、2002年『銃』で新潮新人賞を受賞し、デビュー。04年『遮光』で野間文芸新人賞、05年『土の中の子供』で芥川賞、10年『掏摸』で大江健三郎賞を受賞。作品は各国で翻訳され、14年に日本人で初めて米文学賞デイビッド・グディス賞を受賞。他に『何もかも憂鬱な夜に』『教団X』『あなたが消えた夜に』などがある。
3月10日に公開された映画「去年の冬、きみと別れ」(監督 瀧本智行/主演 岩田剛典)は、本小説を原作とする。キャッチコピー「すべての人がこの罠にハマる。」とは、どういう意味か?映画と小説では、設定に異なる点があり、別作品としてそれぞれ楽しみたい。
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