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読むと頭がよくなったような気がする対談

人間の未来 AIの未来

 iPS細胞の業績でノーベル医学・生理学賞を受賞した山中伸弥さんと将棋で「永世七冠」という偉業を達成した羽生善治さん。 この日本を代表する二つの知性が対談したのが本書『人間の未来 AIの未来』(講談社)である。科学と将棋、互いの専門分野への質問と回答は、実に小気味よく、こちらも頭がよくなったような錯覚を覚える高いレベルのやりとりが続く。

 山中さんが所長を務める京都大学iPS細胞研究所を羽生さんが訪れ、お互いの囲碁のレベルを確認するところから始まる。ちなみに山中さんは八級、羽生さんは初段。

 iPS細胞から臓器を作る研究は各地で進み、いまは「将棋で言うといかに詰ませるか」という段階に近づいていると山中さん。3Dプリンターで細胞をインクのように使って臓器をつくる技術開発もアメリカで行われているという。

 将棋でも「直感」の重要性はよく語られるが、山中さんはiPS細胞をつくる過程で、24個の遺伝子から細胞の初期化に必要な4個の組み合わせに行き着いたのは「勘」だったと語る。こうした「勘」のようなものをAIができるのかと考えるという。こうしたやりとりから二人は人間の「勘」や直感のすごさについて語り合う。

 藤井聡太六段(本文中ではまだ「四段」)の活躍について山中さんが尋ねると、羽生さんは、将棋の直感、読み、大局観の三段階について語り、年齢とともに大局観の重要性を強調する。

 対談後の編集作業もあると思うが、羽生さんが現代の科学、特に脳科学や認識科学についての知見にも相当詳しいことに驚かされる。「量を質に転換する」ためにふだんの生活でも、同じサイクルや思考法に陥らないよう、移動のルートを変えたり、新しい場所に身を置いたりするよう心がけているという。

 あとがきで山中さんは「羽生さんのように、いつも新しいことを学ぶ姿勢を忘れずにいたいと思います。そうすることで、私たちは世界を変える発見と創造にこれからも出会えるはずです」と記している。実によく構成された対談集だ。

  • 書名 人間の未来 AIの未来
  • 監修・編集・著者名山中伸弥・羽生善治 著
  • 出版社名講談社
  • 出版年月日2018年2月13日
  • 定価本体1400円+税
  • 判型・ページ数四六判・223ページ
  • ISBN9784062209724

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