藤井聡太六段の快進撃が続き、将棋がかつてない関心を集めている。それにあやかった訳ではないだろうが、昨年(2017年)「永世七冠」という偉業を達成し、将棋界初となる国民栄誉賞受賞を決めた羽生善治竜王の本が相次いで出版されている。本書『永世七冠 羽生善治』(宝島社)は、本人へのインタビューや対談、観戦記、写真などで、これまでの歩みを立体的にたどる本だ。
羽生竜王はデビューから33年で通算タイトルは99期というから、毎年平均三冠を持っていた計算だ。藤井六段が仮に今年(2018年)三冠を取ったとしても(かなり現実には考えられないことだが)、それを33年間維持しなければ並ばないことになる。途方もない記録だ。
本書のコラムで森雞二九段は羽生将棋の強さのポイントは3つあると書いている。 1 不利な将棋を逆転して勝つ 2 決め手を逃がさない 3 思い切りが良い
しかし、かなりの将棋ファンでもない限り、棋譜やその戦法を理解できないだろう。一般の人たちは、羽生さんの真摯な姿勢や人格にひかれているのではないだろうか。羽生さん自身「実社会では、決断したことが良かったのか悪かったのか、その因果関係がよく分からない部分があります。そんなとき、将棋にたとえてみると、とても伝わりやすい」と語っている。つまり人生のアナロジーとしての将棋、という理解だ。
このように、羽生さんはいくつか名語録を残している。続けて紹介する。
「結果が出ないときに必要なのはそれが実力なのか、一次的なスランプなのかを見極めることだと私は考えます」 「才能とは一般的に生まれつき持った能力のことをいいますが、私は、一番の才能とは同じペースで努力をし続けられる能力だと考えています」 「一局の中で、直感によってパッと一目見て『これが一番いいだろう』と閃いた手のほぼ七割は正しい選択をしている」
先日(2018年2月17日)、朝日杯将棋オープン戦の準決勝で、羽生さんは藤井六段と対戦し、投了した。テレビで関係者が振り返り、「いつもの羽生さんらしい厳しい手は陰をひそめ、藤井六段の実力のほどを観察しているようだった」と語っていた。最終盤の失着がないと羽生さんが勝っていたという。これで非公式戦を含め、羽生さんの1勝2敗となった。通常のタイトル戦とは持ち時間が異なるが、前人未到の「永世七冠」と「国民栄誉賞」を手にした絶頂のときに、未知の刺客がどこからか登場したようなもの。やはり将棋は人生?
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