読むべき本、見逃していない?

哲学者たちはなぜ戦争協力したのか?

京都学派

 先日『京都学派酔故伝』(京都大学学術出版会)という本を当欄で紹介した。時代によって、さまざまなジャンルの「京都学派」があり、昔のセンセイたちはよく酒を飲んだという内容だったが、「京都学派」の本家本元ともいうべき哲学者たちの戦前、戦中、戦後を検証したのが本書『京都学派』(講談社現代新書)である。

 京都学派の祖である西田幾多郎が『善の研究』を独自に著し、弟子の田辺元が後に批判に転ずるものの、西洋哲学と関連づけたことで世界的水準の哲学と見なされるようになった。その後、「京大四天王」と称される教授の西谷啓治、高坂正顕、高山岩男、鈴木成高は東西思想の融合を掲げたことから、「大東亜共栄圏」のスローガンと結びついたとされ、戦後、職を辞した。

 著者は「京都学派の哲学者たちの戦争協力から、今日われわれが学ぶべきことは、彼らが主張した、時流に乗った日本精神の正当化の論理は、端から破綻していたということである。彼らの言説は、むしろ西洋哲学的な文脈のなかにおける新たな理論として位置づけ直すべきだろう」と、彼ら一人ひとりの哲学を丹念に分析する。

 著者の菅原潤さんは、京都大学とはまったく縁のない哲学研究者である。東北大学大学院で学び、現在、日本大学工学部教授。なぜそんな菅原さんが「京都学派」を取り上げたのか。実は東北大学の理学部の科学哲学概論は田辺元、また西田を真っ向から批判した高橋里美、戦後に京都学派を再建した三宅剛一が教鞭を取った伝統があった。東北大学は京大と哲学にかんして深い縁があったのだ。

 戦前の京都学派に変わって戦後は東大教養部の科学史・科学哲学研究室の大森荘蔵、広松渉らが、日本の哲学界をリードした。マルクス主義者であった広松だが、著書『<近代の超克>論』で京都学派を再評価したのは興味深い。

 本書によると、京大に日本哲学史の講座が開設されたのは2000年だという。戦後、ずっとおひざ元で「京都学派」は封印されていたのだ。戦争と学者についての倫理は、日本の安全保障体制の変更が課題に上がっている今こそ、問われるべきだろう。その材料となる一冊だ。

  • 書名 京都学派
  • 監修・編集・著者名菅原淳 著
  • 出版社名講談社
  • 出版年月日2018年2月13日
  • 定価本体900円+税
  • 判型・ページ数新書判・264ページ
  • ISBN9784062884662

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