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こんな女性公安刑事がいたら痛快だ

十三階の女

 警察の公安部門に女性捜査官はいるのだろうか? 数年前、NHKのテレビドラマ「外事警察」で真木よう子が魅力的な公安刑事を演じて以来、いつも持っていた疑問だ。本書『十三階の女』(双葉社刊)のヒロイン黒江律子は、警視庁公安部公安一課に所属する公安刑事だが、実際は「十三階」の符丁で呼ばれる警察庁直轄の諜報組織のために活動している。新左翼組織に潜入させた二重スパイと接触する中で、レイプされかねない状況に陥った。上司の古池は「黒江。耐えろ」とつぶやいたのだが......。

 その後、北陸新幹線開業日の金沢駅で爆発が起こり、死傷者が多数発生した。二重スパイの情報を入手していれば新幹線テロは防げていたのではないか、と律子は悩む。やがて格差、貧困、劣悪な労働環境の解消などを叫ぶ「名もなき戦士団 スノウ・ホワイト」と名乗る若い女性の犯行声明動画がネットに流れた。

 NGO団体の活動家や日本赤軍を連想させる組織の関係者などが捜査対象に浮かぶ中で、イスラム系組織によるトルコ航空機のハイジャック事件が起こり、羽田空港に着陸するという。律子たちは惨劇を防ぐことが出来るのか、迫真の攻防が続く。

 ここまで女性の性を正面から描いた警察小説はなかったのではないかと思う。著者の吉川英梨さんは、「女性秘匿捜査官・原麻希」シリーズなどがあり、随所に女性でなければ書けないような記述がある。

 日本の新左翼運動の歴史と「サクラ」「チヨダ」「ゼロ」などと呼ばれた警察庁直轄の諜報組織の系譜を交錯させた意欲作だ。任務と愛に揺れる律子の造形も新鮮で、シリーズ化の予感がする。もっとも、今は国内の過激派、とくにテロ志向グループは壊滅状態なので本当の意味での現実感はないが・・・。

  • 書名 十三階の女
  • 監修・編集・著者名吉川英梨 著
  • 出版社名双葉社
  • 出版年月日2017年8月17日
  • 定価本体1500円+税
  • 判型・ページ数四六版・396ページ
  • ISBN9784575240535

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