「毒親」とは、子どもを自分の支配下に置き、精神的・肉体的に子どもを傷つけ、その人生に有害な影響を与える親のことである。本書『エレノア・オリファントは今日も元気です』(ハーパーコリンズ・ジャパン、2017年)の主人公エレノア・オリファントの心には、毒母の声がいつも聞こえている。
エレノアは、30歳の独身女性。友だちも恋人もいない、話し相手は毒母と観葉植物、という自他ともに認める変わり者である。本書のタイトルから受けるポジティブな印象とは裏腹に、エレノアには辛い過去がある。エレノアが10歳の時に家が火事になり、顔の半分に火傷の跡が、心にも強烈な傷が残っている。
母親から無条件の愛を与えられず、今も会話のたびに罵詈雑言を浴びせられるエレノアは、働いてウォッカを飲んで寝るというサイクルを続け、ひとりでひっそりと生きている。でも本当は変わりたい、未来を夢見ることができる場所へ行きたい、と切に願っている。
ある夜、エレノアはミュージシャンに一目惚れをして、彼こそが運命の人だと思い込む。人付き合いをしたことがない、感情というものがよくわからない、温もりに触れたことがないエレノアが、自分の手で人生を変えるために動き出す。
エレノアは、人との楽しい会話、人との触れ合いに幸せを感じ、初めてのことに驚き、人を思う感情が心に芽生えていく。友情、愛情、自尊心というものは、大人になる過程で誰もが身につけるとは限らないことを、彼女から知る。エレノアという一人の女性の克明な描写によって、彼女の気持ちに寄り添い、共感し、友のような近い存在に感じられる。
本書は、著者ゲイル・ハニーマンのデビュー作である。2014年、英国スコティッシュ・ブック・トラストが才能ある未来の作家の作品に贈る"ネクスト・チャプター・アワード"を受賞。2017年5月に発売されると瞬く間に話題となり、今では35か国で展開されている。女優のリース・ウィザースプーンが早くから映画化権を獲得したことでも話題になっている。
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