警察ではしばしば不祥事が起きるが、中でも北海道警察が有名だ。過去には道警本部防犯部長まで上りつめた最高幹部の一人が、道警の裏金問題を暴露して大騒動になったし、北海道新聞による告発キャンペーンなどはよく知られている。
本書『見えない不祥事』も、道警の不祥事がテーマだ。「北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない」という副題がついている。道警では相変わらず、好ましくないことが続いていることをうかがわかる。
著者の小笠原淳さんはライター。「札幌タイムス」の記者を経て、北海道で発売されている月刊雑誌「北方ジャーナル」で主に記事を書いている。
日本テレビ解説委員の清水潔さんが「あとがき」を担当している。清水さんは、メディアの世界では有名人だ。『桶川ストーカー殺人事件』『殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』で司法や警察の闇を暴き、真相に迫ってきた。その清水さんが、「今どき、こんな記者がいたのか?」と小笠原さんに驚いたというのだ。粘っこい取材で知られる清水さんがたまげるぐらいだから、小笠原さんのスッポンぶりは、相当なものに違いない。
本書は道警が多数の不祥事を隠ぺいしていることを暴いたものだ。著者は「公文書開示請求」にのっとって、公表されていない懲戒処分の一覧を入手する。そこには法令違反が疑われる不祥事が並んでいた。たとえば「交通違反事案」。警察署に勤務する巡査が「救護等の措置を講じることなく逃走した」ことにより「減給100分の10」「1か月」の減給処分。平たくいえばひき逃げだ。事件自体も隠されていた。このほか万引き、強制わいせつ、住居侵入・・・。
それにしてもと思う。本書に関連する道警関係の本を調べてみたら、出てくるは出てくるは。上記の道警幹部による告発本は何冊もあるし、元道新記者によるものもある。さらには犯罪者に転落した「元エース刑事」の懺悔録、映画にもなった『北海道警察 日本で一番悪い奴ら』など枚挙にいとまがない。
警察というところは日常的に「犯罪者」と近接する社会だ。精神的にはきつい。悪い影響や誘いもあるだろう。そもそも向かない人は、警察学校で学んでいるうちに、かなり消えるという話も聞いたことがある。組織の倫理を維持する大変さは、他の業種とは比較にならないだろうと、ご同情申し上げる。
ところで、なぜ道警に不祥事が多いのか。たまたまなのか。他県では、追及がなまぬるくて表に出ないだけなのか。
小笠原さんは記者クラブに属している記者ではない。むしろ排除されている。しかしながら、いろいろと知恵を絞り、真実に肉薄しようとする。その苦労ぶりや手法も克明に書かれている。記者クラブに安住している記者にとっては新鮮で、参考になるかもしれない。
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