「レンタル彼氏」をご存知だろうか。利用者が1時間あたり4000~7000円程度のサービス料とデートにかかる諸費用を支払い、彼氏役の男性と恋人同士のような時間を過ごすサービスである。利用者はネットで「レンタル彼氏」の写真を閲覧し、気に入った男性にメールや電話で連絡し、実際に会って、デートをする。利用者の多くは主婦やOLで、年齢層は幅広いという。
カオルは、かつて期待の新人俳優として活躍していたが、仕事が減り始めたため、今はレンタル彼氏の仕事をしている。「モデルや俳優みたいにカッコイイですね」と客から言われるたびに初めは心を乱されたが、今では自分の認知度の低さを認めている。
エイコは、声優事務所に預かり所属として在籍している。恋愛経験に乏しいエイコは、表現力に磨きをかけようと、ニセモノでもいいから「彼氏」をつくると決め、カオルを指名する。
エイコは、声優の仕事が増えない現状に焦りと不安を覚えつつ、「私がただやりたいから、もっとやりたいから。それが原動力」と語り、一途に夢を追う。カオルは、やる気に満ちたエイコとデートを重ねるうちに、芸能界から逃げ、努力することを拒んだ過去の自分を振り返り、このままではいけないという漠然とした不安と焦りがあらわになる。
夢を追う、現実での落としどころを考える、この2つのバランスをとりながら、カオルとエイコは自分の望む道を歩みだす。二人はいつしかレンタル彼氏と客という疑似の恋人関係を越えて、互いを高め合う関係に進展していくのだが――。
普通の恋人同士でないがゆえに、もどかしい。この恋はニセモノ?本物?どこまで本気になることが許される?その境界線を手探りしながら、二人の関係を見守りたい。
著者の齋藤ゆうこは、本作で応募総数7165作の中から第5回ネット小説大賞に選ばれ、デビューした。本書『ニセモノだけど恋だった』(株式会社 宝島社、2017年)は、ネット版に加筆をした書き下ろしである。
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