ハンバーグを頼んだのに餃子が出てくる。ホットコーヒーを注文したら、ストローがついてきた。こんなレストランや喫茶店に行ったとしたら、お客は戸惑ってしまうだろう。怒り出す人がいるかもしれない。
本書『注文をまちがえる料理店』は、しかし、そういう珍しいお店の話である。お客は戸惑いや怒りを飲み込み、「まっ、いいか」とハプニングを受け入れる。
2017年6月3、4日、東京都内の座席数12の小さなレストランで「注文をまちがえる料理店」が試験的にオープンした。テレビやネットでも話題になったから、ご記憶の人も多いかもしれない。スタッフは認知症を抱える6人。もちろんサポート体制はきちんと敷かれ、主なメニューはハンバーグ、餃子、ピザの3種類だけだった。
「おばあちゃんにハンバーグを注文したんだけど、見事に餃子が来て大笑いしました」。そんなお客のツィートがネットに流れ、ヤフー急上昇ワードで1位を獲得。翌日には取材が殺到し、世界20か国のメディアから紹介したいという連絡が届いたという。
この企画は、テレビ局でディレクターをしている著者の小国士朗さんが、2012年にグループホームを取材した経験がきっかけになっている。ある施設を取材したときのことだ。昼食は入所者が作ったハンバーグと聞いていたのに、ちょっと違うものが出てきたのだ。「これ、違いますよね」とは言えなかった。
冷静になって考えると、ハンバーグが違うものになっても特に問題はない。食べられればいいのだ。頑張って作ってくれた、入所者たちの笑顔がうれしい。その時ふと、宮沢賢治の名作『注文の多い料理店』をもじった「注文をまちがえる料理店」という言葉が思い浮かんだ。これは企画として相当に面白いんじゃないか。16年末になって、プロジェクトとしてやってみようということで賛同者たちが動き出した。そして17年6月の試験的オープンにつながった。
お客へのアンケートによると、「テーブルでまちがいがあった」という人が60%を超えた。しかし「また来たい」という人が90%以上に。反響を受けて9月16~18日、再び東京・六本木でもオープンした。オペレーションを見直したこともあって、「まちがい」は30パーセントに減った。さらに東京・町田市で「注文をまちがえるカフェ」にも取り組んだ。大盛況で、すべての商品が予定より30分ほど早く売り切れた。
実施には多くのサポーターや、それなりの資金も必要だ。それでも小国さんは、一年に1,2回はイベントとして、どこかでやりたいという。本書のほかに、『注文をまちがえる料理店のつくりかた』(方丈社)も出版し、ノウハウのエッセンスなどを公開している。
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