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「もうひとつの世界」に「もうひとりの自分」...

風の色

 「この世界」と決して交わることのない「もうひとつの世界」が存在するという設定だ。

 『世界がどこかで分岐し、別の時空に「もうひとつの世界」を形成するのだという。私たちの生きているこの世界は、はたしてその元の世界なのだろうか。あるいは、「もうひとつの世界」なのだろうか。もしも、万が一、もうひとりの自分の気配に気づき、その影がつきまといだしたとしたら......』

 「初めて見たはずの光景に既視感を覚えたり、この先のことを知っているような気がした・・・」

 序章にあるような経験をした人は多いのではないか。もしかすると、もうひとつの世界は現に存在し、ここは元の世界ではなく、もうひとつの世界かもしれない。少しの恐怖心と、強い好奇心が一気に芽生え、先へ先へと読み進めたくなる。

 ある朝、東京のカフェで出会った涼とゆりは、次第に好意を持ち、恋人同士になる。ゆりは、愛くるしく気まぐれな猫のようで、涼は、ゆりの心を完全に理解することはできないと感じている。そして涼はある時、ゆりはこの世にもういないと知らされる......

 一方、北海道の大学生である亜矢は、マジシャンの隆(リュウ)と出会う。あるマジックをきっかけに二人は急接近し、恋人同士になる。ある時リュウは、流氷の海の中からの脱出マジックを計画していると、亜矢に明かす。危ないからと必死に止めようとする亜矢に、必ず戻るとリュウは約束するのだが......

 涼とゆり、亜矢とリュウが生きる二つの世界が重なった時、彼らの身に何が起きるのか。本書が描く不思議な世界を、ぜひ感じてほしい。

 原案の作者クァク・ジェヨンは、韓国生まれの映画監督・脚本家。1989年『雨降る日の水彩画』で映画監督としてデビュー。2001年公開『猟奇的な彼女』は、韓国、日本のみならず国際的にも評価を受け、韓国を代表する映画監督として活躍している。

 ノベライズを担当した鬼塚忠は、大学在学中から世界放浪の旅を始め、40ヵ国を巡りながら世界各地で働く。著作に『Little DJ』(2007年映画化)、『カルテット!』(2012年映画化・ミュージカル化)、『僕たちのプレイボール』(2010年映画化)、『花戦さ』(2017年映画化・ミュージカル化)などがある。

 1月26日に公開される映画(監督・脚本 クァク・ジェヨン 主演・古川雄輝、藤井武美)は、流氷の北海道、桜舞い散る東京を舞台に、日韓スタッフが総力を結集している。

BOOKウォッチ編集部 Yukako)

  • 書名 風の色
  • 監修・編集・著者名クァク・ジェヨン 原案 / 鬼塚 忠 著
  • 出版社名株式会社 講談社
  • 出版年月日2017年11月15日
  • 定価本体600円+税
  • 判型・ページ数A6判・256ページ
  • ISBN9784062937696

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