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茅ヶ崎からなぜ多くのミュージシャンが出ているのか?

MY LITTLE HOMETOWN

 神奈川県・湘南の小都市、茅ヶ崎は多くの音楽家を輩出している。「上を向いて歩こう」の作曲家・中村八大、「若大将」の愛称で知られる大スター・加山雄三、ロカビリー歌手、作曲家として活躍した平尾昌晃、「また逢う日まで」の大ヒットで一世を風靡した尾崎紀世彦、今も音楽シーンの最前線を走り続けるサザンオールスターズの桑田佳祐......。なぜ、一地方都市に過ぎない茅ヶ崎が、これほど多くの音楽家を輩出しているのか? 桑田佳祐の中学の同級生であり、サザンの名付け親としても知られる音楽評論家の著者が、その謎に迫った。

 

 本書『MY LITTLE HOMETOWN』は、著者が桑田佳祐のために昨年(2017年)自主制作した映画「茅ヶ崎音楽物語 MY LITTLE HOMETOWN」(熊坂出監督)の原作とでも言うべき本である。

 歴史をさかのぼれば、明治末期、九世市川團十郎、川上音二郎らの別荘地として発展、さらに結核療養所「南湖院」ができたことにより、空気がきれいな町というイメージが定着、東京からの日帰り観光地として関心がもたれるようになった。昭和に入り、松竹の撮影所が東京・蒲田から神奈川県鎌倉市大船に移ったことで、上原謙(加山の父)をはじめ多くの映画関係者が茅ヶ崎に移り住んだ。そして戦後、その子弟が余暇の趣味として始めた音楽が花開いたという。

 以上の背景をもとに、著者が10の名曲を章題に掲げ、加山、桑田らと茅ヶ崎、著者との縁を書いた音楽エッセー集である。加山の母・小桜葉子は明治の元勲・岩倉具視の子孫で、弟の岩倉具憲が建てた高級リゾート「パシフィックパーク茅ヶ崎」が、多くの音楽家の結節点となった事実は興味深い。その後倒産し、上原、加山も多くの借財を背負うことになった訳だが。

「サザンオールスターズ」の名付け親

 白眉はやはり桑田佳祐との出会いだ。1976年の春に、桑田に代わってつけたバンド名が「サザンオールスターズ」になったゆえん、デビュー曲「勝手にシンドバッド」が生まれた背景など、著者しか知らないエピソードが多い。

 同じ湘南でも鎌倉でも藤沢でも平塚でなく、茅ヶ崎というのがミソだろう。先の映画では文化人類学者の中沢新一氏が茅ヶ崎の地形や歴史から解きほぐしたという。茅ヶ崎の海岸にある烏帽子岩。浜降祭という祭礼の際に打ち鳴らされる「ガシャンガシャン」という音こそが「茅ヶ崎のソウルビート」だと著者は書く。「海民が年に一度、母なる海に向かって打ち鳴らす魂の叫びなのだ」と。そうした解釈もさることながら、実に狭い地縁や血縁、人脈で戦後日本の歌謡曲、ポップスがつくられてきたことに驚かざるを得ない。やはり茅ヶ崎には何かがあるのだろう。(BOOKウォッチ編集部)

  • 書名 MY LITTLE HOMETOWN
  • サブタイトル茅ヶ崎音楽物語
  • 監修・編集・著者名宮治淳一 著
  • 出版社名ポプラ社
  • 出版年月日2017年10月13日
  • 定価本体1500円+税
  • 判型・ページ数四六判・286ページ
  • ISBN9784591156377

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