読むべき本、見逃していない?

3人の「相棒」が挑む冤罪めぐるミステリー

幻夏

 人気テレビドラマ「相棒」(テレビ朝日系)の脚本家として知られる著者の2作目の小説。刊行から3年たった2017年8月に文庫化された。謎解きを担う登場人物は、デビュー作の「犯罪者 クリミナル」(「犯罪者」に改題して文庫化)と3作目の「天上の葦」と合わせシリーズになっている。

 第1作の「犯罪者」では、元テレビ局勤務のライターである鑓水七雄、その友人で警察官の相馬亮介が登場、そして鑓水と相馬に命を救われた繁藤修司の過去が語られた。本書では、相馬が過去に深く絡んでいた出来事が物語の原点。鑓水は興信所の所長に、修司はそこで働くスタッフになっていた。

少女連れ去り事件と23年前の事件との接点

 東京都内の所轄書で刑事課から交通課に左遷された相馬は、管内で起きた少女連れ去り事件で応援にかり出され、その現場で木に刻まれた妙な印を見つける。それは相馬が23年前の夏、当時暮らしていた、勤務先の警察署から遠くはない都内で経験した出来事を思い出させるものだった。

 12歳の相馬は2学期の始業式に向かう道を同級生で親友の尚と、その弟の拓と歩いていた。何かを思い出した尚。来た道を一人引き返すと、その後に姿を現すことはなかった。尚の行方は23年たっても分かっていない。尚が最後に目撃された現場には、少女連れ去られた場所にあったものと同じ印があったのだ。

 相馬が少女連れ去り事件で出動したころ、鑓水のもとには23年前にいなくなった息子を探してほしいという依頼が女性から持ち込まれる。女性は着手金300万円を鑓水に渡して姿を消してしまう。探す相手は尚だ。

 ミステリー仕立てで描かれているのは、不条理な力でうみだされた冤罪により崩壊していく家族の姿。過去の事件で明らかにされた「叩き割り」という捜査手法や「恨みません調書」などを折り込み、ドラマ「相棒」でも発揮されたリアリティーが作品を支える。ストーリーが現在と過去を行きつ戻りつして展開し登場人物が多いので、たとえば、相馬の左遷についてなど、前作の「犯罪者」を受けて読んだ方が立ち止まらず読み進められる。

  • 書名 幻夏
  • 監修・編集・著者名太田愛 著
  • 出版社名KADOKAWA
  • 出版年月日2017年8月25日
  • 定価800円+税
  • 判型・ページ数文庫・496ページ
  • ISBN9784041059357

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