「テヘランから来た男」元東芝社長の西田厚聰氏は12月8日(2017年)に亡くなった(享年73)。崩壊寸前とまで言われる深刻な経営危機に陥った東芝については、多くの本が出ている。その中でも本書は「戦犯」の一人と言われる西田氏の人生に焦点を当てた異色の内容になっている。
西田氏は早稲田大学第一政治経済学部を卒業後、東大大学院政治学研究科に転じ、学究の徒をめざしていた。そこでイランからの留学生ファルディン・モタメディと出会い、その後結婚する。彼女が東芝のイラン工場で通訳をしていた縁で、西田氏は東芝とイラン政府の合弁会社に現地採用された。仕事ぶりが認められ、2年後には本社採用となった。
10年も遅れた中途採用のハンデをがむしゃらな努力で挽回した。世界初のラップトップパソコン「T1100」を開発、欧州で販路を開拓した実績で昇進を続けた。2005年に社長に就任し、翌2006年に東芝は米・原子炉技術大手ウェスチングハウス(WH)を買収した。この買収が今日の東芝の経営をゆるがすきっかけとなった。
著者の児玉博氏は西田氏が社長、会長時代に何度もインタビューや取材をした関係だったこともあり、今年の10月5日にも自宅で取材したという。しかし、ついに自分の責任を認めることはなく、「原子力をやってた連中は経営なんてことを一度も考えたことがない連中だった」と原子力部門を非難するのに終始した。その西田氏が後任社長に選んだのが原子力出身の佐々木則夫氏だったのだ。
著者は西田氏を「昭和という時代の臭いのする成り上がり人生を見事に体現した人物だ」と評する。
西室泰三氏、西田氏と東芝の元社長が今年、あいついで鬼籍に入った。西田氏が大胆な投資を行った東芝メモリーの売却が、東芝生き残りの最後の綱となっている。経営判断の妙と歴史の皮肉は隣り合わせだ。
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