ビジネス、スポーツから自動車、お笑い、そして日本酒と、幅広いジャンルでノンフィクションや漫画原作を手がけている著者が「日夜『うまい日本酒』のことを想い、愛おしみ、醸している11人の蔵元や杜氏」を訪ね、酒づくりに対する思いのたけを聞きだし、読んで"利き酒"が楽しめる一冊に仕立てあげた。酒類の嗜好の多様化などにより日本酒の蔵元は減少傾向だが、本書によると、トータルな品質レベルは向上しており、収められた11人はその動きをけん引する存在という。
秋田市の「新政酒蔵」は1852年(嘉永5年)創業と160年以上の歴史を誇る老舗の蔵元だ。現当主は8代目、佐藤祐輔さん。東京大学に進み卒業後は、家業に興味はなくフリージャーナリストとして執筆活動をしていたが、ある集まりで東海地方の蔵元の銘酒を口にし考えが変わったという。その味わいに日本酒の奥深さに気づき、それまでの無関心から一転、研究を重ねて2007年、32歳のときから家業の業務に携わり、12年から社長を務めている。
佐藤さんが継ぐ以前の「新政」の製品だけを知る日本酒愛好家のなかには、同社が本書のような書籍に収められることに首をかしげた人がいたかもしれない。それは、以前の新政は、主に地元利用者に向けた普通酒、いわば、安価なパック酒が製品のほとんどを占め、蔵元というよりは、大量生産を行う工場となっていたからだ。売れ行き不振で赤字になっては、その補てんのため稼働を続けるような状態だったという。
改革を目指して佐藤さんは普通酒主体の生産体制をあらため純米造に転換を図る。その一方、同社の蔵発祥の酵母と伝統的製法にもこだわりバリエーションを拡大。これまでにない日本酒を送り出して愛好家らをうならせようになる。大衆市場のパイを目指して工業化したものの、いつの間にか陳腐化した老舗蔵元をクラフト回帰で"復活"に導いた。
佐藤さんは「酒は作品、音楽や文学と同じなんです。ならばアルバムジャケットや装丁にまできちんと気を配り、作品性をアピールするのは当然でしょう」とボトルやラベルなどについてもデザインの洗練性を追求している。
ほかに、神奈川・山北町の「川西屋酒造」、愛知・設楽町の「関谷醸造」、秋田・横手市の「日の丸醸造」、新潟・佐渡市の「北雪酒造」、奈良・吉野町の「美吉野醸造」、千葉・いすみ市の「木戸泉酒造」、京都・伊根町の「向井酒造」、長野・松本市の「大信州酒造」などを収録。週刊ポスト(2017年12月1日号)の「話題の新刊」では「島根の山奥で30代の杜氏が醸す『池月酒蔵』」、震災の風評被害をはねのけ福島の酒を日本一に導いた『末廣酒蔵』など、心打つ物語が満載」と紹介している。
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