通信販売の番組を見て注文したあなた、家電製品が壊れてクレームをつけたあなた、きっとあなたは「彼ら」と話したことがあるはずだ。彼らは東京でも日本でもなく、タイ・バンコクであなたに対応している。
コールセンターは沖縄や秋田など日本では最低賃金の安いところに立地している。企業はさらなる経費削減のため、タイ・バンコクに集中的にコールセンターを設けた。そこに働くのは、ちょっと訳アリな日本人が多いという。なぜタイのコールセンターで働くのか、アジアの労働事情に詳しいノンフィクションライターの水谷竹秀さんが口の重い彼らに足しげく通い、聞き出した本音がここにある。
一家で夜逃げした男性、タイのゴーゴーボーイにはまり妊娠した女性、同性愛者、性同一性障害者などなど、日本に居場所を見出せなかった彼、彼女らが思い思いに語っている。タイの日本人社会の中でも「最底辺の人々」と蔑視されている彼らだが、意外とさっぱりしている。手取り10万円台という収入だが、切り詰めれば日本よりも暮らしやすい面もある。なにより決まりきったマニュアルに従い対応すれば、仕事は済む。圧倒的に日本で働くよりも気楽なのだ。
週刊文春(11月23日号)で書評を書いている城繁幸さん(作家、人事コンサルタント)は「自らの意思で異国に居場所を見つけようと日本を離れた人たちだ。彼らに居場所を提供出来なかった現実を、我々日本人はそろそろ直視すべきだろう」と書いている。
著者の水谷さんは2011年に『日本を捨てた男たち』で開高健ノンフィクション賞を受賞した気鋭のライター。ここで書けないようなきわどい女性たちの生態も描かれている。けだし労作と言うべきだろう。
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