佐藤雅彦さんは大手広告代理店のCMプランナーとして湖池屋の「ドンタコス」やNECの「バザールでござーる」を送り出し、独立後はクリエイターとして幅広い活動を続けている。そのなかには「だんご3兄弟」の作詞・プロデュース、NHKの子ども番組「ピタゴラスイッチ」の監修などがあるが、手がけたものには「分かりやすさ」が共通する。
「一番のやりがいのあることは、『ひとに何かを分かってもらうための新しい手法を考え出す』こと」という佐藤さん。それは「何かをわかるとき、小さな『生きてて良かった』が生まれる」から。その喜びを多くの人に享受してほしいとの思いを込めたのが本書という。
水のなかに卵が沈んでいるビーカーの脇に食卓塩のビンが置かれた写真が示される。次のページにも同じような写真があるが、こちらは卵が水に浮いており食卓塩のビンの中身がかなり少ない。アルキメデスの原理などを知らなくても、2枚の写真を見比べれば、その違いの理由がすぐに分かって、"ナットク"感が頭に広がる。
これは「塩とたまご」。ほかに「5円玉とカメラ」「紙の裏からこんにちは」「ジョン、メディアからの脱出を試みる」など、見ればへぇ~っとうなずき、分かった喜びをこんどだれかに教えてやろうと思うような例が60ほど集められている。後半部にエッセイが6編収められているが、これらは、著者によると「『新しい分かり方』を体験したあなたに読んでほしい」作品で、やはり発見に満ちている。
佐藤さんは本書出版に際し、自身のブログにメッセージを載せ「一冊の本の中に、作品の体験とその体験を共有した読者のあなたに向けての随筆があるという今までにないメディア・デザインです。この本にしか存在しない空間を是非、享受していただきたいと思います」と述べている。
「ドンタコスったらドンタコス」と節をつけて繰り返しながらメキシコを思わせる衣装のおじさんたちがツーステップ行進するCM(1994年)や、「だんご3兄弟」の歌(99年)はシンプルで分かりやすく、子どもたちがよくまねをしていた。本書もその系譜にあるよう。週刊新潮(2017年11月9日号)で書評ページで詩人の渡邊十絲子さんは「『伝える/分かる』ことをとことん追究してきた著者の、視覚や聴覚や触覚のするどさ。そこに自分を同調させていくのが、とても楽しい」と述べている。
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