『チーム・バチスタ』シリーズで知られるベストセラー作家、海堂尊さんがいま夢中で取り組んでいるのが、この『ゲバラ漂流』シリーズだ。昨年(2016年)出た第1部『ポーラスター ゲバラ覚醒』では、親友と南米縦断バイク旅行に出て、さまざまな社会矛盾に気が付くゲバラの青春時代を描いた。第2部の本作では、ボリビアの革命に外国人として飛び込むのを皮切りに、ペルー、パナマ、コスタリカ、グアテマラなど中南米各国の指導者、反体制派のリーダーらと出会いながら、政治、経済、軍事を学び、革命家の卵として育つ揺籃期を扱っている。
バチスタ・シリーズのようなものを期待すると面食らうかもしれない。全編これ、中南米史の講義のような趣さえあるのだ。圧倒的な情報量(巻末の参考資料が10ページ、約200冊)だが、海堂さんが手際よく料理してくれているため頭に入りやすい。通読すると近世ではスペインが、近現代はアメリカがいかにこの地を蹂躙したかがよく分かる。
ここまで来れば、キューバまではあと一息だ。来年はカストロが主人公の第3部、再来年はキューバ革命からゲバラの最期までの第4部が出る予定だ。
キューバ革命が成就した後、ゲバラがなぜボリビアに向かい、CIAと手を結んだボリビア政府軍によって殺されたのか、その理由も理解できる。ゲバラは中南米全体のアメリカからの解放を夢見ていたのだ。
歴史の教科書のような本と書いたが、そこはさすが海堂さん。人妻との恋愛やパナマでCIAの要員を養成する学校で軍事教練を受ける話など、エンターテインメントの要素も十分である。
週刊文春の11月2日号ではタカザワケンジ氏(書評家)が「愛すべき『革命坊や』がどのような革命家になるのか。いまから第三部が待ち遠しい」と期待を寄せている。
それにしても千葉大医学部出身の医師で、現在も医学研究機関で専門的な研究に取り組む海堂さんの、現代史の超大作に取り組む二刀流パワーには脱帽だ。ちなみに、ゲバラも医者だった。
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