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池波・鬼平をしのぐか、「平成の鬼平」、7人が競作

蘇る鬼平犯科帳

 池波正太郎さんの代表作であり、不滅の人気を誇る「鬼平犯科帳」を現代の7人の作家が競作し1冊に収めた。上田秀人さん、逢坂剛さん、梶よう子さん、風野真知雄さん、門井慶喜さん、土橋章宏さん、諸田玲子さんがそれぞれの持ち味を生かしながら腕を振るう。蘇るばかりでなく、生まれ変わった鬼平もあり、それぞれでも、読み比べても楽しめる。巻末に池波さんの鬼平ものの後期の傑作とされる「瓶(かめ)割り小僧」を収録した。

「平蔵シリーズ」の逢坂剛さんも

 「鬼平犯科帳」が世に出て2107年で50年目。最初に登場したのは、文藝春秋の娯楽小説誌「オール讀物」1967年12月号に掲載された短編「浅草・御厩河岸」だった。これが大きな反響を呼び、連載が始まったという。本書は、この鬼平50年と、紀伊國屋書店創業90年をとらえて、同社と文藝春秋の合同企画で刊行された。

 7人のうち逢坂さんは、父の挿絵画家、中一弥さんが「鬼平犯科帳」の挿絵を担当していた。元々は『カディスの赤い星』で直木賞を受賞するなどミステリー出身だが、近年は時代小説にも注力し、自身で新たに「長谷川平蔵シリーズ」も手がけている。本書に収められたのはその最新作「せせりの辨介」。上田秀人さんの作品は、武家社会で生きる平蔵の苦悩をえがいた「前夜」。梶ようこさんの「石灯籠」も平蔵の生き方がテーマ。梶さんは、絵師の四代目豊国の話を書いた「ヨイ豊」で直木賞候補となり「歴史時代作家クラブ作品賞」を受けている。

忠吾も復活、妖盗・葵小僧と再対決も

 人気シリーズ「耳袋秘帖」で知られる風野真知雄さんは、同シリーズの外伝として「狐桜」を寄せ、門井慶喜さんの作品はおなじみの脇役、木村忠吾が登場する「浅草・今戸橋」。門井さんの「家康、江戸を建てる」は16年上半期の直木賞候補になった。

 土橋章宏さんの「隠し味」は、池波さんの本家作品でもしばしば彩を添えた「食」を採り入れた。諸田玲子さんの「最後の女」は、妖盗・葵小僧と鬼平の再対決を描く。

 そして、しめくくりに「瓶割り小僧」。週刊新潮(2017年10月26日号)で文芸評論家の縄田一男さんは、同作品の選択について「初期作品からだと、なんだかんだと異論が出ようが、後期作品なら、この一篇がピカ一」と述べている。

池波さんも想像しなかった展開

 「鬼平犯科帳」はテレビ時代劇シリーズでも定番。中でも中村吉右衛門版は、1989年7月に第1シリーズが始まり、計9シリーズを重ね、その後は年1本ほどのペースで2016年までスペシャル版が放映された。BSやCSでは今でも再放送がない日はないほどで、もっとも根強い人気がある。

 テレビシリーズは吉右衛門さんの父親、松本白鸚さん、萬屋錦之介さん、丹波哲郎さんも演じており、それらも、吉右衛門版の合間を縫って再放送されている。デジタル時代の進化で鬼平は、演じ手ごとの見比べを容易に楽しめる。「鬼平犯科帳」の名前で録画予約しておくと、すぐにハードディスクが満杯になるとうれしい悲鳴のファンもいるほどだ。

 登場以来50年を経てこんどは、書き手ごとの読み比べも楽しめる。「鬼平」は池波さんが想像もしなかったようなレジェンドになった。

  • 書名 蘇る鬼平犯科帳
  • サブタイトル池波正太郎と七人の作家
  • 監修・編集・著者名池波正太郎、逢坂剛、上田秀人、梶よう子、風野真知雄、門井慶喜、土橋章宏、諸田玲子
  • 出版社名文藝春秋
  • 出版年月日2017年10月 5日
  • 定価本体1750円+税
  • 判型・ページ数四六判・384ページ
  • ISBN9784163907321

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