21世紀後半、アメリカは環境破壊のためフロリダなど沿岸地域が水没しつつあった。化石燃料の使用を全面的に禁止する法案に反発した南部3州は独立を宣言、アメリカは内戦状態となった。そんなあらすじの近未来エンターテインメント小説だ。
南部の貧しい家に育った娘サラットは難民キャンプに身を寄せる。兄は武装組織に接近する。やがてサラットに自爆テロをそそのかす謎の男が近づく。
著者のオマル・エル=アッカドさん(35)は、エジプト・カイロ生まれのジャーナリスト。移住先のカナダの大手新聞で、アフガン戦争などを取材した。明日の見えない難民キャンプの実態やさまざまな暴力、テロなどの描写がすさまじい。「リビアやイエメン、アフガニスタン、イラクでは未来ではなく現在です」とインタビューに答えている。
トランプ大統領が誕生したアメリカは、二つに分断したと言われている。第二次南北戦争はけっして絵空事ではない。本作は近未来のフィクションのかたちを取っているが、いまアメリカで、世界の紛争地域で起こっていることのパッチワークのような作品かもしれない。
著者の小説デビュー作。「感情の模索は、ノンフィクションより小説の方がやりやすいですから」と答えているが、なまはんかなノンフィクションを超えるリアリティーを持っている。
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