西郷隆盛は、大久保利通や木戸孝允とともに「維新の三傑」に数えられる歴史上の有名人であり、その名を知らない人はいないだろう。ところが、その実像については分からないことが多く謎に包まれているという。本書は、日本の近代政治史や幕末史が専門で、西郷研究の第一人者である著者が、丹念な調査により西郷の"真の姿"の迫った評伝。来年、2018年のNHK大河ドラマは西郷を描く「西郷(せご)どん」というから、こちらを読んでから見る楽しみ方もできそうだ。
大久保利通とともに薩摩藩のリーダーとして倒幕に向け活躍する西郷。戊辰戦争の江戸総攻撃では、勝海舟と話し合って攻撃を中止し江戸城無血開城を果たした。その後、明治新政府への参加を断り続けていたが、大久保らの説得で参加を決意。しかし、新政府で征韓論争に敗れるなどして鹿児島に帰郷した。
倒幕、江戸城無血開城など幕末では大活躍をする西郷だが、明治に入ると、その歩みが不確かになる。本書では、背景にあったのは、健康問題だったと指摘する。
西郷は征韓論に執拗にこだわり朝鮮使節を志願するのだが、それはストレスが高じた体調不良と異常な精神状態がさせたこと。西郷の生涯にあった出来事をみれば、いずれもストレスの原因になりそうなことばかりだ。2度にわたる遠島での暮らし、主君、島津久光との異常ともいえる対立、徳川慶喜にはたびたび翻弄された。日本医史学会の酒井シズ理事長が監修した「幕末志士の死亡診断書」では、沖永良部島に流刑になった際にフィラリアに感染した可能性が指摘されている。本書は一貫して、西郷の"真の姿"について、健康問題にこだわって議論しているのが特徴だ。
2017年9月24日付読売新聞の書評欄で本書をとりあげた京都大学教授で政治史学者の奈良岡聰智さんは「決定的な内容である」と評価する一方「本書によって西郷の人物像はよく分かるが、それでもなお彼が謎に満ち、多様な捉え方が可能な人物であると感じる」とも述べている。
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