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医学の先人たちの足跡をたどる

醫の肖像―

 日本大学医学部図書館には医学の歴史を語る多くの貴重な書籍、著名人の肖像画、絵画などの資料が集められている。誰が集めたかは実は明らかではないのだが、整理を依頼され、蔵書目録『日本大学医学部図書館古医学資料目録』を1984(昭和59) 年に出版した酒井シヅ・順天堂大学名誉教授は、医史学に詳しかった生理学の内山孝一教授、卒業生の石原明・横浜市立大助教授の関与を推測している。

 このコレクションを年10回発行の日大同窓会新聞に読み物として紹介し続けてきたのが宮川美知子・新聞担当理事だ。満18年が経ち、連載はすでに180 回を超えている。『醫の肖像~日本大学医学部コレクション』はそのうち79編を選び、歴史がわかりやすいように概ね年代順に並べ、写真や関連資料を補ってできた。

 古代の医学といえばギリシャや中国だ。ヒポクラテス医師は古代ギリシャに 7人いたこと、有名なヒポクラテスの木が東大図書館前に植えられたいきさつなどが肖像画の説明として書かれている。中国の資料の代表は医神・名医14人の立像をまとめた掛け軸だ。『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』の神農、『黄帝内経(こうていだいけい)』の黄帝、『傷寒論』の張仲景、開腹手術もした外科医の華佗 (かだ) などで、その何人かは肖像画や本など別の資料もある。

 中世、近世、江戸は、『解体新書』の杉田玄白、乳がん手術の華岡青洲、『養生訓』の貝原益軒など日本人医師のエピソードが中心になる。江戸時代には「はしか絵」など病気をテーマにした絵画も描かれた。近代はシーボルト、ポンペ、ベルツなど西洋医学を紹介した外国人医師と弟子たちが活躍、さらには現代医学へとつながっていく。

 「貴重な歴史的資料を知ってほしいと連載を始めたが、毎回、参考文献や資料を集めるのが大変だった。昔の医師はいろんな活躍をしているのにもびっくりした」と宮川さんは話している。

 同図書館は 4月から日本大学図書館医学部分館 (東京都板橋区大谷口上町) と改称された。利用者は同大学関係者や近隣医師会員に限られており、閲覧希望の他大学関係者らはあらかじめ分館に問い合わせ、申し出る必要がある。

(医療ジャーナリスト・田辺功)
  • 書名 醫の肖像―
  • サブタイトル日本大学医学部コレクション
  • 監修・編集・著者名宮川美知子 著、日本大学医学部同窓会 編
  • 出版社名櫻醫社
  • 出版年月日2017年6月 1日
  • 定価本体2500円+税
  • 判型・ページ数21㎝・287ページ
  • ISBN9784890072088
 

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