社長から手紙をもらうと、サラリーマンならギョッとするだろう。何か大失敗をやってしまったか? いよいよクビか? それとも会社の業績が悪くて、大変なことになっているのか?
ところが、京都のエンジリニアリングメーカー「ケイハン」の社員は、なんと毎月、西田康郎社長から手紙をもらう。もちろん「ギョッ」とすることが書かれているわけではない。
こんなタイトルの600字ほどのエッセイがつづられている。給料明細袋の中に同封されているから自然に目に触れる。四季折々の思い、業務での注意事項や気づいたこと、本を読んだり、テレビを見たりして感心したことなどが記され、「今期の目標達成に向けて、がんばりましょう」などの言葉で締められている。
「ケイハン」は上場企業ではないが、創業85年。石炭の粉を固めて練炭を作り、蒸気機関車の燃料で貢献したのがスタートだ。一時は国鉄の燃料シェアの90%を占めていた。その後、事業転換し、製鉄所にコークスをつくるための「成型炭」を提供、「かためる=粉体成型」の技術ではオンリーワン&ナンバーワンを誇る。東京、川崎、福山、福岡などに営業所や工場、技術研究所を持ち、従業員は約200人。
西田さんが「手紙」を書き始めたのは、父が社長で、自分がまだ専務だった約20年前から。会社組織が次第に全国に広がり、毎月の給料日に、従業員一人一人に直接「ありがとう」ということができなくなった。何かいい方法はないか。思いついたのが「手紙作戦」だった。
「前向きにやろう」「ひらめきを大事にしよう」「常に感謝の気持ちで」などの思いを共有することも狙って始めたレター作戦だが、ネタ探しには苦労した。師事した経営コンサルタントから、しばしばアドバイスをもらい、何とか続けられたという。
本書は、そんな20年分の手紙を整理し直してまとめたものだ。書かれていることは、どこの会社の社長や社員が読んでも参考になることばかり。西田さんは本書を通じて、同社の社業のように、人と人の絆をさらに強固に「かためる」ことができれば、と願っている。
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