著者は劇団「大人計画」主宰の演出家にして俳優、さらに芥川賞候補2回の作家でもある才人。雑誌連載のエッセイも多く、そのいくつかを愛読していた。ある時、猛烈な忙しさと筆者の特殊な事情が重なり、連載を落としそうになったが、超巨大な活字を使い文字数を減らすことによって急場をしのいだことがあった。そのまま書籍化もされた。その特殊な事情とは離婚をめぐる修羅場だったことが、その後明らかになった。
それから7年。51歳になった著者は31歳の茨城出身の女性と再婚した。「東京の夫婦」というタイトルの本書。元妻のこと、妻のこと、二度の結婚について相当赤裸々に書いてある。松尾ファンにとっては垂涎の内容である。
評者の米光一成氏(ゲーム作家)は「もちろん、どこまで書いてどこからは書かないというコントロールはされているのだろう。だが、ギリギリのライン、隠しておきたいことを書いてこそのエッセイだという気概も伝わってくる」と評する。
結婚を機会に代官山から笹塚に引っ越しした二人は、1年でまた引っ越しをすることに。「おおげさだが、人間はさすらうために生まれて来たのじゃないか? そんな観念が自分にはある。(中略)人生の着地点の見えない子供のいない夫婦は、いつまでも、旅の途中なのだ」。そんな決めゼリフの連発。「大人計画」の芝居はプラチナチケットゆえ、もう生で見るのはあきらめている。せめて、この本を読んでよしとしよう。
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