「金星のめぐみ」という万能の効力をうたう水を、一家はずっと使い続けている。主人公の林ちひろの湿疹が治ってから、もはや信仰にも近い形で依存している。姉のまーちゃんは、そんな両親と妹とは距離をおき、叔父の雄三と共謀して脱洗脳の大芝居を打つが、失敗に終わった。
やがて、ちひろは中学3年生になり、進路に悩みながらも、クラスメートとの交友を楽しんでいる。「金星のめぐみ」を購入するため、一家の経済的負担は多く、「会」にはカルト教団的ないかがわしい噂もある。
評者の千野帽子氏(文筆家)は「小説終盤の『集会』の場面では、特殊な信仰を持つ人々の特殊さではなく、むしろ『平熱』と呼びたくなる行動が語られる」と記している。
不穏な空気をたたえながらも、家族の絆は強い。「わたしたち親子は、その夜、いつまでも星空を眺めた」という結びは実に静謐である。千野氏は「どうか本書が少しでも多くの、一二歳から一一二歳までの人に読まれますように」と勧めている。
著者は2011年に『こちらあみ子』で三島賞受賞。『あひる』と本作が芥川賞候補となった。
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