「今までの〈入門〉とは違う方向から読んでもらえるような本は作れないだろうか」と考えて出来上がったのが本書という。「今までのとは違う方向」であることを示したのが、タイトルの「ちゃぶ台返し」だ。
評者のドイツ文学者でエッセイストの池内紀さんによると、著者は「不人気の名ごりをとどめたガラガラの歌舞伎座三階席で開眼」した若手芸能研究者。「国立劇場に就職して、裏方のイロハを学ぶことから始めたあたりが並の学者ではない」と池内さんは高く評価している。
「ちゃぶ台返し」といえば、おなじみになったのは1970年代。漫画「巨人の星」の星一徹や、テレドラマ「寺内貫太郎一家」の貫太郎が、怒りにまかせて、配膳された食卓(ちゃぶ台)をひっくり返し居間がカオスとなるシーンだ。いまでもそれらのアクションが連想されるようだが、本書の内容について著者は「『ちゃぶ台返し』ほど豪快にはいかないにしても、お決まりの〈入門〉的なるものをちょいとひっくり返してみたい」と、控えめながら自信をのぞかせる。
歌舞伎入門といえば、起源として「出雲のお国」が紹介され、江戸時代にはじまる団十郎・菊五郎以来の歴史をたどり、専門用語の解説や舞台の見方などの項目が並ぶのが標準的だ。
本書はまず「考察編」として「歌舞伎の気になるところ」をピックアップ。ここで「隈取」「見得」「型」「女方」「踊り」などを取り上げた。そして「実践編」として「勧進帳」や「京鹿子娘道成寺」などの演目について語る。
池内さんは「ワケ知りの見巧者(みごうしゃ)の眼ではなく、ふつうの人がいぶかしく思ったり、目を丸くしたりするシーンが切り口にしてあって、いちいち納得がいく」と述べている。歌舞伎についての著述もある池内さんだが、観劇で首をかしげていた「謎の動き」があったのだが、本書でその意味が分かったという。
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