読むべき本、見逃していない?

Twitterから生まれた小説のリアル

ボクたちはみんな大人になれなかった

 

 これはいささか面白い成り立ちの本である。著者「燃え殻」氏は、1973年生まれ、東京都内のテレビ美術制作会社で働くサラリーマン。43歳独身。彼は社内の新規事業部を立ち上げることになり、日報代わりにTwitterを使うことにしたが、やがて脱線し、いまや約7万人のフォロワーがいる「140文字の文学者」と呼ばれる存在だ。
 すこし前に「ケータイ小説」なるジャンルが生まれ、何冊かのベストセラーを生み、消えて行った(もしかしたら、まだ残っているかもしれないが)。そのステレオタイプで陳腐な記述にうんざりして、ほとんど手に取ることもなかったが、「燃え殻」氏の記述は抒情的と評判を呼び、糸井重里、大根仁、堀江貴文、会田誠、樋口毅宏といった各界のクリエーターが帯に賛辞を寄せている。
 さて、内容だが、43歳の主人公が1999年の夏に別れた恋人に、ふとフェイスブックの友達申請をしてしまう、というところから始まる。「マーク・ザッカーバーグがボクたちに提示したのは『あの人は今』だ。ダサいことをあんなに嫌った彼女のフェイスブックに投稿された夫婦写真が、ダサかった。ダサくても大丈夫な日常は、ボクにはとても頑丈な幸せに映って眩しかった」
 エクレア工場のアルバイトからテレビの美術制作会社のアルバイトに移った日に、ボクたちは渋谷円山町のラブホテル街に向かう。1999年は「地球が滅亡する」という噂が流れ、もちろん地球は滅亡しなかった訳だが、本書には当時の流行、風俗も盛り込まれ、ちょっと懐かしい気分が漂う。Cakesというサイトに連載中から多くのアクセスが殺到し、書籍化にあたっては、かなり修正がされたという。『電車男』はパソコン通信のチャットをもとにしたものだったが、新潮社はこういうものへの嗅覚が鋭く、素材の「文学」化がとてもうまい。
 過去の記述と現在のある1日の記述が交互に描かれているが、読みやすい。小説家の書く小説とは明らかに文体が異なるが、リーダブルであり、かつ心に刺さってくるものがある。Twitterはもしかしたら、ものすごい創作の土壌となる場ではないか、そんなことを考えながら30分で読了した。(BOOKウォッチ編集部 JW)

  • 書名 ボクたちはみんな大人になれなかった
  • 監修・編集・著者名燃え殻 著
  • 出版社名新潮社
  • 出版年月日2017年6月30日
  • 定価本体1300円+税
  • 判型・ページ数四六判・157ページ
  • ISBN9784103510116

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