中国の通貨「人民元」が誕生したのは1948年、中華人民共和国が成立する11カ月前だという。中華民国成立後も通貨の統一は出来ず、各地でさまざまな通貨が混在していた。人民元はそれらを銃口で消し去ったのだ。
今から30年ほど前に中国に行ったことがある。外国人は当時、外貨兌換券というお札を使うことになっていたため、人民元を見る機会はなかった。中国政府が厳しい外貨管理を行っていたからである。中国の経済規模も小さい時代だった。
副題にあるように鄧小平による経済改革、そしていま習近平が勧める中華覇権路線に伴い、人民元の影響力はかつてないものになっている。本書は、朝日新聞の中国特派員として、中国の金融当局者を取材した筆者が、中国の通貨の歴史を叙述する形で、中国の権力とナショナリズムを解説するものとなっている。
評者の遠藤乾(北海道大学大学院教授)は「威信と不安、政治とアイデンティティ、金融と信用とが入り乱れ、読者をぐいぐいと引き込んでいく」と記している。
日本が深く関与するアジア開発銀行(ADB)、中国主導でつくられたアジアインフラ投資銀行(AIIB)。日本は後者には入っていない。「弾を撃ってないだけで、中国との戦争のひとつなんだよ」というある外交官のことばを本書は紹介している。中国の「元」(YUAN)と日本の「円」(YEN)は同じ由来を持ち、「¥」は双方のシンボルだという。実際、「元」の表記として使われている国もあるそうだ。中国に関心のない読者にも勧めたい一冊だ。
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