東海道新幹線が大津を過ぎ、京都に近づくと一瞬暗闇になる。逢坂山トンネルだ。明治12年、大津と京都を結ぶ鉄道(東海道本線の旧線)は、その新幹線よりもさらに南の山中でトンネル工事が行われていた。相次ぐ事故やトラブルに悩んだ鉄道局局長の井上勝は、東京から元八丁堀同心の草壁賢吾に調査を依頼する、というストーリーだ。
著者は「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう」シリーズで世に出たミステリー作家。現役の鉄道会社社員とあって、本書でも鉄道にかんする豊富な知識が生かされている。
評者の若林踏氏(ライター)は、「推理の組み立てに魅了されるという意味では、今年刊行された本格ミステリーの中でも一、二を争うものだ」と高く評価する。
シリーズ化が期待される力作だ。
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