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元警察庁キャリアの覆面作家が明かす「警察の内部」

書評掲載元:本の雑誌 8月号 「私の上半期ベスト1」

警察手帳

 今春放送されたテレビドラマの視聴率ベストスリーを刑事ドラマが独占した(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。それほど、われわれは架空の刑事の世界にどっぷりと浸っている。しかし、刑事警察は全国に30万人の職員を有する警察組織の一部門に過ぎず、刑事ドラマによって形づくられた我々の警察観は、誤解に満ちている。

 著者は警察庁の元キャリア官僚で、本文から刑事、公安部門の要職を渡り歩いたことが分かる。海外派遣の経験があることも明かしているが、条件を絞れば、本人が特定されかねないので、幾人かの経歴や体験を重ねているかもしれない。現在は退職して、『新任刑事』などを発表し、覆面作家として活躍している。

 そういう著者が小説ではなく、体験をもとに警察組織の真実を書いたのだから、類書にはない視点と面白さがある。まず、キャリア官僚は辞めても、こうした本を書かない。書くのは末端の退職刑事だ。だから、警察組織全体を俯瞰した視点がある。さらに、採用の条件、待遇や配属、昇進、異動など警察を一企業に見立てたかのような「人事」の原則から説明しているのもユニークだ。

 ドラマでは「本庁」と「所轄」といった言葉が出てきて、その対立や葛藤がドラマのエネルギーとなることが多い。だが、実際はどうなのか? 本書では、「ドラマや小説と現実との違い」についても言及している。本書を読めば、刑事ドラマがますます面白くなることは間違いない。

 
  • 書名 警察手帳
  • 監修・編集・著者名古野まほろ
  • 出版社名新潮社
  • 出版年月日2017年3月16日
  • 定価本体800円+税
  • 判型・ページ数新書判・256ページ
  • ISBN9784106107078
 

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