もっと早く教えてほしかった！ 画期的なデザインマネジメント「行為のデザイン」。

 「行為のデザイン」とは耳慣れぬ言葉と皆さんお思いでしょう。人の行動を子細に観察して行為のバグ、つまりムダな動きを見つけ出し、それをつぶしていく。しかもただつぶすだけでなはく、よりスムーズに行動できるように、より洗練されたカタチになるようにする、それが行為のデザインの核心です。

 たとえば、こんな事例があります。家に帰って、上着を脱いでハンガーに掛ける。そしてズボンを脱いで、またハンガーに掛けようとすると、直前に掛けた上着を少しずらさなければなりません。それこそが行為のバグ。バグをつぶすために、ズボンを掛ける部分を手前につくるようにしてはどうでしょうか。

 プロダクトでよく見かけるのが、意味不明のエラー表示。「E03」と出ているので、取扱説明書をやおら引っ張り出してその項目を探すと、「電池が入っていません」と書いてある。非効率なことこの上もありません。改善の余地があります。

 本書では、こうした事例がふんだんに盛り込まれています。そして改善するための方策についても事細かに説明がなされています。従来は、デザインといえば、デザイナーだけの仕事、あるいは彼らに指示を出す人も含めた限られた人たちが関わるのが一般的でした。しかし、それでは、行為のバグをスマートに改善することはできません。

 著者が提案するのは、デザイン・ワークショップの開催です。デザイナーはもとより技術者・開発者、企画や営業に携わる人にも参加してもらい、多様な視点で、行為のバグを見つけ、段階を踏んで改善を施していく。実際にこの手法を導入しているのは、パナソニック、富士通、コクヨファニチャー、アップリカ、日本能率協会などで、いま急拡大中です。導入企業が増えるほど、私たちの生活はより便利になるはずです。

書名：問題解決に効く　「行為のデザイン」思考法著者：村田智明　京都造形芸術大学大学院SDI所長/教授発売日：2015/9/18定価：本体1500円（税別）