昨年7月に発売され、反響を呼んだ写真集『のこされた動物たち』。著者は福島第一原発20キロ圏内で動物保護と餌やりのかたわら、彼らの姿を撮り続ける元報道カメラマンです。
餌よりも人とのスキンシップを求めて近寄ってくる犬、餓死寸前で助けられた猫、飢えのあまりビニールを食べる牛、仲間と寄り添い死んでいった豚など、震災直後に著者が見た光景は壮絶なものでした。紛争地帯での取材経験のある著者でも、今までに見たことのない悲惨さだったと語ります。
震災から一年、圏内の動物たちをとりまく状況はどうなったのか……実は、ほとんど変わっていないばかりでなく、東北の寒い冬を迎え、事態は悪化の一途をたどっています。
本書『待ちつづける動物たち』は『のこされた動物たち』の続編にあたり、7月後半からの夏、秋、冬の圏内を記録した写真集です。食べ物のなくなった土地で、飢えをしのぐ犬猫、悲しい運命を迎える家畜たち、脱走したダチョウなど、必死に耐えて助けを待ちつづけている動物たちの姿を収めています。
前作よりもさらに動物たちの様子をより詳しく記述し、巻末には行政の動きを年表でまとめました。圏内の全体を把握できる内容になっています。
テレビや新聞ではなかなか報道されることのない、別の視点から見た20キロ圏内を伝える一冊です。
書名:待ちつづける動物たち 福島第一原発20キロ圏内のそれから
著者:太田康介
出版社:飛鳥新社
発売日:2012年3月2日
価格:1,365円(税込)