「平安京があったから道路が碁盤の目になっている」「空襲がなかったから古い町並みが残っている」「魅力的な景観は厳しい保護策のおかげ」「京料理は伝統的な和食の代表」「インバウンドで大儲けしている」......こんな京都のイメージ、実は全て間違い?
京都大学出身の経済学者・有賀健さんが、2023年9月19日発売の著書『京都 未完の産業都市のゆくえ』(新潮社)で、京都にまつわる印象論の数々を覆している。
まず、「碁盤の目」状の道路について。北大路・東大路・西大路などの道路が建設されたのは大正から昭和にかけてであり、現在の姿を平安京のおかげだとするのは「半ば誤り」だという。さらに、高い建物がない町並みも、実は「景観保存政策は全く関与していない」そう。
伝統的な和食=「京料理」というイメージもばっさり斬っている。本書いわく、「京料理」という表現が初めて使われたのは1952年、「ちもと」という料亭の広告だった。加えて、京都のイメージが強い和食の代表格「懐石料理」や「割烹料理」は、昭和に大阪で始まったもの。「京の着倒れ、大阪の食い倒れ」という言葉の通り、近年まで京都はそれほど食文化の盛り上がっている場所ではなかったのだ。
では、現在の京都の「古都」イメージはどのようにして出来上がったのか。本書では、主に戦後から現代にかけての歩みに着目し、京都という町の本当の姿に迫っている。さらに、京都市中心部の「洛中」の人々が持つ「選民意識」にも切り込んでいる。唯一無二の土地柄がいかにして出来上がったのかがわかる一冊だ。
【目次】
序章
第一章 京都の経済地理
第二章 京都の町と社会
第三章 京都の町の変容と人口移動
第四章 ゆりかご都市京都
第五章 住む町京都
第六章 観る町京都
終章
■有賀健さんプロフィール
ありが・けん/1950年、兵庫県尼崎市生まれ。京都大学経済学部卒。イェール大学経済学博士(Ph.D.)京都大学名誉教授。専門は労働経済学を中心とした応用経済学。主著Internal Labor Market in Japan(Cambridge University Press, 2000共著)。甲子園でソロムコのサヨナラ安打を見て以来のタイガースファン。愛読書はル・カレ、C.カミング、L.オスボーンやF.ブローデルの作品。
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