大切な家族が認知症になってしまったときに、少しでも長い時間そばにいたいと考える方も多い。しかし、認知症の方を支えるのには困難が伴う。負の感情が芽生えてしまうことも珍しいことではない。
今回は、認知症患者を支えようとがんばる家族に向けたガイドブックを紹介する。
2023年8月30日『1日が36時間になる日 家族が認知症になったら』(クロスメディア・パブリッシング)が発売された。
2020年時点で、高齢者の6人に1人が認知症有病者と推定され、日本は世界一、認知症発症率が高い国と言われている。5年後にはさらにこの数字が増え、約5人に1人が認知症になるという推計もある。
そんな中、高齢者が高齢者を介護する「老老介護」や認知症の方がほかの認知症の方を介護する「認認介護」、認知症の親を介護するために仕事を辞めざるを得ない「介護離職」、さらには介護が原因となって子の世帯までが貧困化し、やがて破産にいたる「介護破産」など介護にまつわる問題は尽きない。
タイトルの『1日が36時間になる日』とは、ケアする人の「介護のために1日36時間をつぎ込みたい」という思いに寄り添ったもの。本書では、家族が認知症になった場合のケアの方法に加えて、ケアを行う家族自身の影響についても言及していく。認知症のケアは、様々な感情が伴うものだ。大好きな人相手であっても、苦痛に感じることも多い。心が折れる前に、認知症の特性や介護にまつわる問題を事前に知っておくと、少し心が軽くなりそうだ。
さらに本書は、日本での認知症に関する法制度や支援、介護サービスなどを巻末付録で紹介している。世界的な本であるものの、日本で知っておきたい情報もまとまっていて嬉しい。
認知症は自分には関係ない病気とは言えない。身近な人が発症する可能性もあるし、自分が発症する可能性もある。遠い先の未来に感じる場合もあると思うが、今のうちに知識をつけておこう。
本書の構成は以下の通り。
第1章:認知症
第2章:医療的支援を受ける
第3章:認知症の方によく見られる特徴的な行動症状
第4章:自立した生活の中で直面する問題
第5章:日常のケアで直面する問題
第6章:健康上の問題
第7章:認知症の行動・心理症状の管理
第8章:気分の変化や不信感に伴う症状
第9章:家族の急な病気や事故に備えて
第10章:外部からの支援
第11章:認知症の方との関係性
第12章:認知症ケアが家族に与える影響
第13章:自分自身を大切にする
第14章:子供・若者たち
第15章:経済的・法的問題
第16章:介護施設の利用
第17章:認知機能の低下を防ぐ、遅らせる
第18章:脳障害と認知症の原因
第19章:認知症研究の現状
付録
■ナンシー・メイスさんプロフィール
元米国アルツハイマー病協会相談役・理事
ジョンズ・ホプキンズ大学医学部精神医学・行動科学学科T・ローウィ・エレノア・プライス教育サービスの精神科助手やコーディネーターを務めていた。現在は引退。
■ピーター・ラビンズさんプロフィール
メリーランド大学教授、医師
ジョンズ・ホプキンズ大学医学部精神医学・行動科学学科老年精神医学プログラムの創設者。アルツハイマー病と関連疾患を研究するために創設されたリッチマン・ファミリー・プログラムの教授職を最初に務めた人物。
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