あなたのお悩み、本が解決します!
本の街、東京・神保町にある「BOOK HOTEL神保町」では、お客さんのお悩みにぴったりの本をスタッフが提案する「ブックカウンセリング」が人気。このサービスとBOOKウォッチがコラボして、ホテルのスタッフが、みなさんから寄せられるさまざまな相談に本を通して応えてくれます。題して、「お悩み解決BOOKコンシェルジュ」です。
第2回は、今の時代ならではのこんなお悩みが。
【今回のお悩み】
アラフィフ兼業主婦です。ここ数年、推し活ブームですが、私には「推し」がいません。それは人に限らず、熱中できることがないことにも通じている気がして、今の世の中、なんだか居心地の悪さを感じます。推しがいれば人生が豊かになるのだろうな、と思うのですが、身近でない誰かに「熱を上げる」という感覚が、昔からよくわからないのです。
私ってやっぱり、つまらない人間なのでしょうか。誰かや何かを推す気持ち、体感してみたいです。
この居心地の悪さ、どうすれば? 3人のスタッフが、それぞれの切り口で本を選んでくれました。
『小さな幸せ46こ』
よしもとばなな 著
▼概要
「あなたの人生に寄り添ってくれる幸福論的エッセイ集」。よしもとばななさんのエッセイで、過去を振り返って気付いたことや、日常の些細なできごとが綴られています。日々の楽しいできごとはもちろん、一見よくない出来事にも幸せを見出すばななさんの考え方は、読み手を前向きに、あたたかい気持ちにしてくれます。
▼選書理由
「推し活」には「狭く深い」熱狂的な一途さがあって......「推し」になるきっかけは、ビビッと一目惚れが多そう......というイメージがありませんか?
「推し」になるきっかけは「広く浅く」からでも何でもいい! 恋愛と同様に、知っていくうちに次第に好きになる......ということもある! と私は思っています。
この本を読んでいると、代わり映えのない日常にも、たくさんの幸せが散りばめられていることに気付かされます。「推し」は探しに行って見つかることもあれば、身近なものが自然に「推し」になることもあるはずです。
まずは「狭く深く」と考えずに、「広く浅く」視野を広げて日常を見つめてみたら、「推し」に繋がる「幸せ」が見つかるかもしれません。
(選書スタッフ:石原)
『りさ子のガチ恋 俳優沼』
松澤くれは 著(集英社)
▼概要
26歳のOL、りさ子の趣味は舞台鑑賞。若手イケメン俳優の翔太君を追いかける日々を送っています。出演舞台には全通(1作品の全公演を鑑賞すること)し、SNSに張り付き、劇場の楽屋口で出待ちをし、手紙は作品ごとに3度渡す。ボーナスはもちろん、プレゼントにつぎ込みます。ある日、ネットで彼との交際を匂わす女が現れて......。
▼選書理由
「推し」を持ちその沼にどっぷりとハマっていく感覚を味わえる一冊です。こういう感情なのか! と推しを持つ状態を理解することができると思います。「追いかける側」の泥くさい一面を余すことなく見せつけられるような感じです。良いことばかりでなく、推しに貢献し続ける大変さが沁みます。また、推される側にも焦点の当たる本なので、両者の心情がよくわかって面白いです。
本書の主人公、推しを持つりさ子の言葉って、すごくシンプルなんです。「好き」「応援したい」「かっこいい」。複雑でないからこその気持ちの強さ、そして客観性のなさ。たしかに、生きている感覚は強く味わえるのかもしれません。私も「推しを持たない側」なので相談者様のおっしゃることはよくわかる気がします。ぜひ本書の感想をお聞きしたいです。
ただ、読み終える頃には、推しはいなくてもいいか、と感じられるかもしれませんね(笑)。
(選書スタッフ:木村)
『世界の美しい本屋さん』
清水玲奈 著(エクスナレッジ)
▼概要
世界一周本屋さんの旅! 本屋の数だけ歴史あり。写真集でありながら、店主のインタビューも掲載されています。店主のお話の中には本屋さんになった経緯や建物の造りについても紹介されており、ページをめくるたびに心が踊る1冊になっています。
▼選書理由
推しの意味を調べたら、「人に薦めたいと思うほどに好感を持っている人物のこと」でした。推し活ブームの影響もあり、好きのハードルがどんどん高くなっているように感じます。グッズを買ったりライブに行ったりしないと推しているとは言えないような雰囲気が、居心地の悪さに繋がっているのではないかなと思います。
そこで、まずは好きのハードルを下げてみていただきたいと思い、この1冊をご紹介します。
ここにご相談をしてくださったということは、本好きさんですよね......? 店主の想いに共感した、本のディスプレイが素敵など「こんな素敵なところがあるんだよ~」と人に伝えたいポイントを見つけることから始めてみるのはいかがでしょうか。
ちなみに私は、アーティゾン美術館にある勝利の女神像を携帯の待ち受けにしているくらい推しています。窓際に居るので、行く日の天気によって見え方が違うのがとても素敵なんです。彫刻が推しの人もいるので、何を推したっていい! と思ってもらえたら嬉しいです。
(選書スタッフ:鶴田)
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(※本コラムでは、プライバシー配慮などのため、いただいたお悩みを編集して掲載しています。あらかじめご了承ください)
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