人との接し方がデリケートになり、人間関係に起因するトラブルが増えた現代社会。「人を傷つけない」だけでなく、「人を励ます」言葉が求められる中で、コミュニケーションを円滑に進める技術の需要は高まり続けている。
2023年5月10日に発売された教育学者・齋藤孝さんの新著『上手にほめる技術』(KADOKAWA)は、そんな技術の中の一つ「ほめる技術」を、教育の専門家の視点から解説した1冊だ。
本書では、「ほめることの技化」が提案されている。「技化」とは、人それぞれに感情があることを十分に意識したうえで、人をほめることを技にしていくこと。「適切な言葉を選択するだけでなく、巧みに相手を喜ばせる技術」があれば、同じ内容を伝えるコミュニケーションでも、結果には大きな差が出る。
たとえば、齋藤さんイチオシの技に「イエス・ノー・イエス方式」がある。これは「ほめたい部分もあるけれど、注意しておきたい部分もある」というときに役立つテクニックで、相手にとって気持ちのいいことから話し始めて、注意は途中に挟んで、最後はまたポジティブな言葉で締める、というもの。
会話中、最初に言われた言葉と最後に言われた言葉は、強く印象に残りやすい。仮に、肯定が八、否定が二の割合になるような話をしたとしても、最初と最後が否定になっていれば、言われた側は「否定された」気持ちになりがちだ。
逆に、否定の二割を中間に挟むと、言いたいことを伝えても、悪い印象は残りにくくなる。それどころか、「この人は話したくないことも話してくれた」と、プラスに受け取ってもらえる場合もある。この「イエス・ノー・イエス方式」をうまく使えば、同じことを同じバランスで話しても、相手の反応はまったく違うものになるという。
本書ではほかにも、夏目漱石や村上春樹ら文豪の「ほめる技」や、コミュニケーションを上手く回すためのテクニックが多数紹介されている。職場や家庭で、「ほめて伸ばす」を実現したいすべての人にオススメできる内容だ。
■齋藤孝さんプロフィール
さいとう・たかし/1960年静岡県生まれ。明治大学文学部教授。東京大学法学部卒。同大大学院教育学研究科博士課程等を経て現職。『身体感覚を取り戻す』(NHK出版)で新潮学芸賞(2001年)、『声に出して読みたい日本語』(草思社)で毎日出版文化賞特別賞(2002年)受賞。同作はシリーズ260万部のベストセラーに。他著書に『読書力』『コミュニケーション力』(岩波書店)、『理想の国語の教科書』(文藝春秋)、『上機嫌の作法』『語彙力こそが教養である』(KADOKAWA)等多数。NHK Eテレ『にほんごであそぼ』総合指導。
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