本を知る。本で知る。

避妊禁止、義務教育短縮、無試験で名門大合格 中国版「異次元」少子化アイデア

ニューズウィーク日本版 2023年5月2日・9日合併号

 東アジア各国で少子化対策の議論が沸騰している。2023年3月、韓国の2022年の合計特殊出生率(暫定値)が過去最低の0.78を記録して大きな話題を呼び、日本では1月に岸田文雄首相が「異次元の少子化対策」を打ち出した。そして、同じく少子化に悩む中国でも、少子化対策のためにかなり「異次元」な提案がなされているという。

 2023年4月25日に発売された『ニューズウィーク日本版 2023年5月2日・9日合併号』(CCCメディアハウス)では、「日本人が知らない世界のニュース50」と題して、日本ではあまり報じられなかった世界のニュースを特集している。今回はその中から、中国の少子化対策論争について紹介する。

book_20230426135622.jpg

「産めよ増やせよ」の珍アイデア

 中国の2022年の出生数は956万人と、5年前から約800万人減と急落した。合計特殊出生率も、既に1.1〜1.2(2022年推計)と日本以下だ。建国以来初となる出生数1000万台割れにショックを受けたのか、出産への一時金支給・シングルマザーの待遇改善など正統派の政策を飛び越えて、各界から出生率を上げるための奇抜なアイデアが提唱されている。

 大手旅行予約サイト・トリップドットコム創業者の梁建章(ジェームズ・リャン)さんは、義務教育を現行の9年から7年(日本で言えば中学1年生まで)に短縮するべきだと主張している。早く社会に出れば、その分早く結婚するはずで、若く結婚すればするほど子供が増えるはずだという理屈だ。学力低下を心配する声に対しては、「中国人の学力は世界トップだから問題なし」と懸念を一蹴したという。

「避妊禁止」を提案する人もいる。香港の不動産企業・中原集団の施永青(シー・ヨンチン)主席は「出生の責任を果たすまで、例えば2人の子供をつくるまではコンドームを買えないという規制を検討せよ」と主張した。一人っ子政策下の中国では、大学キャンパスにコンドーム自動販売機を設置し、ホテルの部屋には必ずコンドームを用意するなど、避妊が全力で推進されていたのを、許可証がないとコンドームが買えない真逆の世界にすべきだ、としている。

 実現する可能性が高いのは「2人目以降の子供は大学入試で加点」という提案だ。中国人民大学の金燦栄(チン・ファンロン)教授は「2人目にプラス20点、3人目に30点、4人目は無試験で名門大学に合格でどうだ!」と発言している。4人目の無試験はさすがに過激だが、2人目、3人目の入試加点は複数の論者から提案されているという。科挙の伝統を持つ受験大国・中国で実現されれば、たしかに出産は爆増しそうだ。

台湾版「鬼滅の刃」 声優は1人10役

 台湾では、日本のアニメを吹き替える声優が不足している。『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は興行収入が約28億円と、邦画では過去最高の成績を記録したが、その吹き替えは少人数の声優による、かなり無茶のある体制。主役の竈門炭治郎を担当した銭欣郁が、主要キャラの甘露寺蜜璃ほか、10以上の脇役キャラも担当。また、準主役級の2人も1人の声優が担当しており、戦う2役を1人の声優が一度に演じる事態まで起きた。

 その背景にあるのは、業界の声優軽視。台湾では声優に十分な製作費が割かれず、演じる役の数ではなく収録1本当たりでギャラを支払う習慣もあり、声優が自立して稼ぐのは至難の業なのだ。結果、声優の数が不足し、アニメ 『ドラゴンボール改』では、主役の孫悟空を演じるベテラン声優が、実に12ものキャラクターの吹き替えを1人で担当することになったという。

 このほか、ブラジルで起きている女子相撲ブーム、イタリアで発令されたコオロギ粉パスタ禁止令など、今週号のニューズウィークには人に話したくなるちょうどいい話題が盛りだくさん。読めば、しばらく世間話のネタには困らないかも。

【Special Report】
教養|日本人が知らない世界のニュース
Americas
01 寿司バブルに踊るNY
02 AI実用化の珍騒動
03 ネズミ害と万引のNY
04 オレゴンとアイダホで州境紛争
05 ブラジル女子相撲
06 蘇ったブロードウェイ
07 「詐欺師症候群」って?
08 テック企業で組合つぶし続々
09 燃え上がるキャンセルカルチャー
10 今どきの代名詞
11 ロブスターが消える
12 悲惨なNY鉄道事情
13 コロンビアのセクシーワッフル店

Europe
14 トライアスリートがオスカー獲得
15 コオロギ粉パスタ
16 イギリスでプール激減
17 「専業主婦代」払え
18 プーチンが旅行できる国
19 北欧の知られざる暗黒面
20 ロシアで中国語ブーム
21 懲りないロシアスパイの浸透先
22 英国がワインの名産地に?

Animals
23 アジアチーター最後の砦
24 「麻薬王カバ」を強制移送
25 2本足のキツネ...
26 アメリカでザリガニ自滅
27 犬と猫の「共同親権」
28 毒物で凶暴化したアザラシ
29 マレーグマの餌場は墓場

Asia
30 中国少子化対策の珍アイデア
31 ミャンマーがロシアに「返礼」
32 ベトナム稲作農家のメタン封じ
33 インドで「英語戦争」
34 中国は爆走自転車大国
35 台湾で声優が1人12役
36 早く老ける韓国の30〜40代
37 中国ディープフェイク規制
38 ミャンマー国軍の芸能人狩り
39 首都移転でインドネシア地価高騰
40 北朝鮮女性の仁義なき戦い
41 中国高齢者を狙う無料ラジオ詐欺

Middle East & Africa
42 イラン「宅録」曲がアメリカを動かした
43 ジンバブエ教員流出
44 エジプトが湾岸諸国に身売り
45 カタールW杯会場の隣にゲイ矯正施設

Science & Technology
46 致死率最悪の病気
47 メタバース早くも失速
48 世界の魔術信仰者は10億人
49 精子を停止させる避妊薬
50 日本産の危険な外来種

【Periscope】
UNITED STATES|FOXが「嘘」を認めても十分じゃない
UNITED STATES|ケネディ家の御曹司がバイデンに挑む
CHINA|NYで中国の「海外警察署」が摘発されたが
RUSSIA|韓国に怒ったロシアが北の核開発に協力?

【Commentary】
視点|西側で広まるロシア分裂論の現実味──河東哲夫
分析|米機密流出事件で「消される」人々──グレン・カール
中東|アラブ的現実思考とイスラエルの空論──シュロモ・ベンアミ
Superpower Satire|風刺画で読み解く「超大国」の現実
「 脱亜」できない日本の受難──ラージャオ&トウガラシ
Economics Explainer|経済ニュース超解説
チャットGPTは不誠実なAI?── 加谷珪一
Help Wanted|人生相談からアメリカが見える
81歳の息子が強制性交罪に?
Life as Music|ニューヨークの音が聴こえる
「 なんとなく」覆面社会化する日本──大江千里

【World Affairs】
ウクライナ|反攻のカギは最初の24時間にあり
中国|共産党のムチとムチでテック産業は育つのか
アフリカ|2人の男の確執がスーダンを翻弄する

【Features】
調査報道|ツイッターの青バッジはフェイクのしるし?

【Life/Style】
Movies|ピーチ姫が頼れるリーダーに変身!
Movies|世界がテトリスに夢中になるのを知っていた男
Drama|懐かしくて新しいパラレルワールドへ
Documentary|「セックスは神の贈り物」教皇のイマドキ度
Work|3人の女性首相が世界に示した辞める勇気
My Turn|鬱と不安を仲間と共に乗り越えるまで

ほか。

※画像提供:CCCメディアハウス

 
  • 書名 ニューズウィーク日本版 2023年5月2日・9日合併号
  • 出版社名CCCメディアハウス
  • 出版年月日2023年4月25日
  • 定価490円(税込)
  • 判型・ページ数72ページ

オンライン書店

雑誌・ムックの一覧

一覧をみる

書籍アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

漫画アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!

広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?