28歳、独身、職なし。
そんな3人で、にぎやかおウチごはん!
おかざき真里さん作の『かしましめし』(祥伝社)は、心が折れて仕事を辞めた千春、バリキャリだが男でつまづくナカムラ、恋人との関係がうまくいかないゲイの英治――同級生の自死をきっかけに再会した美大卒の3人が、一緒にごはんを食べるマンガだ。
いよいよ今夜11時6分から、本作をもとにした実写ドラマの放送がテレビ東京系列で始まる。千春、ナカムラ、英治を、それぞれ前田敦子さん、成海璃子さん、塩野瑛久さんが演じ、主題歌はKIRINJI、エンディングテーマはkojikojiが担当する。
上司のパワハラに心が折れて仕事を辞めた千春は、生きる力を失っていた。
まだ28歳、そのうち社会に復帰しなければならないが、まだ今ではない。無職になっても心は無にならず、何もしていないと、思い出や記憶に心が押しつぶされそうになる。
気晴らしにいろいろやってみるが、すべてうまくいかない。漫画は、物語に記憶を刺激する地雷が含まれているのでよくないし、マラソンは体力的に無理。何かに没頭していたい――。
そんな千春をまず救ったのが「料理」だった。少なくとも、キャベツを千切りにしている間は、他のことを忘れられるからだ。
活路が開けた気がして、千春ははしゃぎはじめる。勢いのまま、元恋人の葬式で再会した大学時代の旧友2人を誘って、3人だけのホームパーティーをひらくことになった。
しかし、そのことを約束してから、また心が不安定になってきた。社会人として一生懸命働いている2人に、途中でリタイアしてしまった自分の現状をどう説明すればいいのか。説明したとして、2人はそんな自分を受けいれてくれるだろうか――。
だが、そんな心配は杞憂だった。友達との食事は、どんな気晴らしより千春の心を救ってくれた。英治はこう言う。「美味いもん食うとったら、美味い美味い言うだけで時間過ぎるやん。最高の贅沢やん」。でも、それはおいしいと言える相手がいてこその話。友達とかしましく話しながら、おいしごはんを食べる。それこそが最高の贅沢なのだ。
苦しみを抱えているのは千春だけではない。英治は、仕事と恋愛の両方で悩んでいる。デザイナー志望だったのに、会社の都合で営業に回されて、なんとなく働き続けている。ほとんど家に帰ってこなくなった恋人のことも、こちらから吹っ切ることはできない。
会社員としてバリバリ働いていたナカムラは、同僚兼恋人だった男に裏切られ、職場と婚約者を両方失った。誇りを持っていた仕事を、恋に破れて居づらいだろうから、という理由で外される屈辱を味わい、気持ちのやり場がない。
そんな2人にとっても、千春の家でのごはんは救いとなっていた。3人だけのパーティーは頻繫に開かれるようになっていく。あまりの居心地のよさに、ナカムラはこんな言葉を漏らす。
「もう私ここに住んじゃおうかな~。......なーんて」
「いいよ」
「えっ」
それから、3人の共同生活がはじまった。もちろん、20代後半のモラトリアムは、ずっとは続かない。やがて、それぞれの恋も動き出す。でもとりあえず今日は、3人一緒にごはんを食べる。たとえそれが、かりそめの楽園だとしても――。
2巻では、美味しい「かしましめし」とともに、共同生活をおくる3人それぞれの恋模様も描かれる。マンガならではの表現も多い本作を、どうテレビドラマに翻訳するのか。期待が高まる。
BOOKウォッチでは4月11日から第1巻の試し読みを掲載する。「包まない餃子」や「バターチキンカレー」、「闇ホイル焼き」など、作ってみたくなるレシピもたくさん収録されているので、お楽しみに!
■おかざき真里さんプロフィール
おかざき・まり/長野県生まれ。高校在学中からイラストやマンガを投稿し、多摩美術大学卒業後は広告代理店に入社。デザイナー、CMプランナーとしてキャリアを積みながら、1994年に「ぶ~け」(集英社)にて漫画家デビューする。「彼女が死んじゃった。」「渋谷区円山町」「サプリ」と、映像化作品を次々と生み出した。2014年から2021年にかけて月刊!スピリッツ(小学館)で「阿・吽」を、2017年からはフィール・ヤング(祥伝社)で「かしましめし」を連載している。
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