コロナ禍で産後うつの可能性がある女性が倍増しているという。立ち合い出産や里帰り出産ができなくなったり、親を頼ったりすることができなくてつらかったという話を、身近でも耳にする。
とはいえ、実は、産後うつはコロナ以前から珍しい病気ではなく、調査によって数字にばらつきはあるものの、10人に1人以上がかかると言われている。ホルモンバランスの乱れ、削られる睡眠、初めての育児へのプレッシャー。さらに「みんなやっているんだから、できて当たり前」といった周囲の無理解が母親を追い詰める。その結果、自殺や母子心中といった最悪の事態に至ることも。
そうならないために、どうすればよいのか、そもそも産後うつとはどういう病気なのか、理解を深められるのが本書、『マンガでわかる! 産後うつ?と思ったら読む本』(主婦の友社)だ。「産後うつかも?」と感じている女性やその家族に向けて、産後うつの原因と症状、専門家による治療法、周囲のサポート方法などを詳しく解説している。
監修者は、国立成育医療研究センターの立花良之医師と、予防医療・栄養コンサルタントの細川モモさん。余裕がない毎日を送っている産後の女性でも気軽に読めるよう、マンガ仕立てになっている。
本書によれば、産後うつの発症時期でもっとも多いのは産後1ヵ月まで。入院中は問題なかったのに、出産後に自宅に戻って発症する場合もある。
混同されやすいのがマタニティブルーだ。産後すぐに発症して自然と回復することの多いマタニティブルーに対し、産後うつは産後数週間から数カ月後に発症し、しっかり治療をしないと回復しづらいのが特徴だ。
そして、男性にも産後うつがあるという。暮らしの大きな変化に悩まされるのは女性だけではなく、男性も当てはまるのだ。男性の場合は産後3~6か月後に発症する傾向にある。
産後うつを放置すると、自殺や母子心中にまで追い込まれてしまうケースもある。産後の女性の死亡原因の1位は自殺だというショッキングなデータも(妊産褥婦の自殺―東京都の集計及び概略分析より)。そのうち半分がうつを発症していた可能性が指摘されている。
本書には、産後うつを発症した人の体験談も掲載されている。実家の両親に子どもを預けて入院し、深く眠れたことで次第に回復していったという女性は、「あのとき入院して本当によかった。取り返しのつかないことをしていたかもしれないと思うと、ゾッとします」と当時を振り返る。
産後うつの原因ははっきりとはわかっていないが、ホルモンバランスの乱れと産後の疲れや睡眠不足による脳の炎症ではないかと考えられている。また、近年の研究では食事が関係しているという報告も。なかでも鉄は意識して摂るべき栄養素と言われている。本書では、鉄分を含む食材や、吸収率のよい鉄をとるための方法も紹介している。
産後うつは、甘えでも怠惰でもない。当人が「ダメな母親だ」と自分を責めて思い詰めることのないように、周囲の人にこそ読んでほしい一冊だ。
■立花良之さんプロフィール たちばな・よしゆき/国立成育医療研究センター こころの診療部乳幼児メンタルヘルス診療科 診療部長。信州大学医学部周産期のこころの医学講座 特任教授(併任)。産後うつをはじめとした妊産婦のこころの診療を行っている。周産期のこころの問題は妊産婦の誰もが持ちうるものであるということを社会全体が知り、すべての親子に寄りそうような世の中になることを願いつつ、地域母子保健活動に従事している。
■細川モモさんプロフィール ほそかわ・もも/予防医療・栄養コンサルタント。母子健康増進のための日米の専門家チーム「ラブテリトーキョー&ニューヨーク」代表理事。産後うつリスクを高める産後ママの貧血と乳幼児の貧血予防のため、採血なしで貧血チェックができる「おやこ保健室」を全国で開催し、母子貧血の実態について国際学会で発表。二児の母。
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