2023年3月31日、「シティ・ポップ」の当事者たちへのインタビューを集めた書籍『シティ・ポップとラジカセ』(徳間書店)が発売された。
2010年代後半に注目されはじめ、今や音楽ジャンルとしてだけでなく、ムーブメントとして定着した感のある "シティ・ポップ"。そのシティ・ポップは、80年代当時、CDよりもカセットテープで聴かれていた。そこで、周辺カルチャーの一つとして、いまカセットテープがあらためて注目を集めている。
たとえば、山下達郎さんは、昨年6月、11年ぶりにリリースしたオリジナル・アルバム『SOFTLY』をカセットテープでも発売した。当時を体感していない若い世代にも「アナログ感がエモい」とウケ、あらためて脚光を浴びているという。
本書では、そんなカセットテープが全盛を極めた70年代末から80年代にかけて、当時の若者から人気を集めた「カセットテープ・カルチャー」が紹介されている。
伊藤銀次さんによる、元祖シティ・ポップともいわれる山下さんのバンド「シュガー・ベイブ」の裏話や、名曲「DOWN TOWN」の誕生秘話、佐野元春さんとの邂逅。杉真理さんが語る、ナイアガラ・トライアングル、竹内まりやさんとの出会いのエピソード。稲垣潤一さんが明かす、秋元康さんのペンによる大ヒット曲「ドラマチック・レイン」の誕生経緯。EPOの「DOWN TOWN」カバーの経緯など、音楽ファン、シティ・ポップ・ファン垂涎の、関連アーティストたちのインタビューを多数掲載している。
さらに、かつて「4大カセットテープ・メーカー」と呼ばれたTDK、ソニー、マクセル、AXIAの中から、最も人気の高かったTDKと、後発ながらイメージ戦略でシェアを広げたAXIAのOBたちに当時の苦労話、裏話をインタビューしている。
カバーイラストは、シティ・ポップカルチャーを代表するアーティスト・鈴木英人さんが担当。ほか、各社のカセットを写真で紹介する「カセットテープ・ギャラリー」、当時の世代で知らぬ者はいない伝説の雑誌『FMステーション』の元編集長による回顧録などなど、シティ・ポップ・ファンにとっては、読みどころ、見どころ満載の一冊といえる。
2023年現在、海外から飛び火した形ながら日本でも再評価され、ブームとなっている昭和のシティ・ポップ。当のアーティストは、どのような想いを曲に込めていたのか。80年代に数多くのヒット曲を生んだ当事者たちが当時を語っている。
カセットテープの全盛期、ブランクテープで圧倒的なシェアを誇っていたTDK、ソニー、マクセル。さらに後発ながら瞬く間にシェアを広げたAXIAを加えた4大ブランドの代表機種を紹介。執筆は「懐かしのカセットテープ博物館」館長の加藤邦裕さん。
シティ・ポップ初心者に向けて、シティ・ポップがなんたるかを知る上でまずは聴いておきたい名盤を20枚厳選紹介するディスクガイドも掲載されている。執筆は、『昭和歌謡職業作曲家ガイド』(シンコーミュージック)の著者・馬飼野元宏さん。
昭和生まれの五十路記者が、平成ひと桁生まれのカセットマニア・若月啓聡さんの自宅を訪問。2万個のテープを所有し、後にカセット業界を背負って立つかもしれないという若者にインタビューしている。
60年代末に誕生し、70年代になると市場のニーズに応えるべく様々な変化を遂げてきたラジカセ。このコーナーでは、群雄割拠の70~80年代に各社がしのぎを削って作り、発売された名機の数々を通じて、その進化の様子を紹介している。
【本書のコンテンツ】
<アーティストたちが語ったシティ・ポップ> 稲垣潤一、杉真理
懐かしの4大ブランド代表モデルを写真で振り返る カセットテープ・ギャラリー
どんな音楽がそう呼ばれる? 「シティ・ポップ」を音楽的に定義する
ビギナー必聴の20枚を厳選紹介! シティ・ポップ名盤選
60年代から始まる栄枯盛衰を振り返る ニッポンのカセットテープ史
黄金時代に開発に関わったOBによる証言 TDKカセットテープ
新ブランド立ち上げに関わったOBによる証言 AXIAカセットテープ
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<アーティストたちが語ったシティ・ポップ> 鈴木茂、伊藤銀次、EPO
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オーディオが花形だった時代に開発に関わったOBによる証言 ビクター・カセットデッキ
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