2023年1月19日、ビジュアルで身につく「大人の教養」シリーズ『図解でよくわかる はじめての世界神話』(世界文化社)が発売された。
絵画、映画、アニメ、ゲームなど、さまざまな芸術分野のモチーフにもなっている神話。ギリシア神話、ケルト神話、日本神話など広く知られたものから、エジプト神話、インド神話、中国神話など比較的知られていないものまで、本書は8つの神話を取り上げている。その神話のポイントとなるエピソードにスポットを当て、絵画や彫刻、地図、説明図解などを多用してわかりやすく解説。
■世界共通の教養・常識としての「世界神話」
■ギリシア神話 プロメテウスの罪
火を盗んで人間に与えたことで 岩山に縛られた反逆の神
オリュンポス神族が支配する地上では、人間も生活をはじめていました。人類の起源について、ギリシア神話ではいくつかの解釈がなされています。古代ギリシアの詩人ヘシオドスの『仕事と日』によると、人間の時代はクロノスによる黄金の時代からはじまり、銀の時代、青銅の時代、英雄の時代、そして鉄の時代と続いてきたとされています。時代が下るにつれて、環境とともに人間も堕落してきたと伝えています。
ギリシア神話のプロメテウスは、火を盗んで人間に与えたことで岩山に縛られた反逆の神。また、人間の創造神ともされている。
プロメテウスは弟のエピメテウスとともに土と水をこね、神の姿に似せて人間をつくった。出来上がった人間をプロメテウスは溺愛し、家の建て方、馬車や船のつくり方、数や文字、天候の読み方など、生活に必要なほとんどのことを教えた。
ゼウスが人間から火をとり上げた時は、寒さに凍える人間を見て、火を盗んで人間に与えた。しかし、人間が火を使って武器をつくり、戦争をはじめると、ゼウスの怒りが爆発。プロメテウスは磔(はりつけ)にされて生きたまま肝臓をワシについばまれるという、重い罰を与えられた。
■物語のモチーフになり、時空を超えて語り継がれてきた神話の世界
■インド神話 ハヌマーンの大冒険
ラーマ妃救出作戦で活躍した「孫悟空」のモデルとされる猿の神
古代インドの叙事詩『ラーマーヤナ』には、コーサラ国の王子ラーマの英雄譚が書かれています。ラーマ王子はヴィシュヌの化身とされ、さらわれた妻をとり戻すために冒険に出ます。そのラーマ王子の仲間として登場するのが、ハヌマーンという猿の神です。ハヌマーンは風の神ヴァーユの子で、猿の顔に人間の体、長い尻尾をつけたユニークな姿をしています。その名は「骸骨をもつ者」を意味します。
本書は、ビジュアルで世界神話を堪能しながら教養がサクッと身につく1冊。読めば神話をモチーフにした作品の理解が深まり、ますます面白く感じられそうだ。
■蔵持不三也さんプロフィール
くらもち・ふみや/1946年栃木県今市市(現日光市)生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、パリ大学第4大学(ソルボンヌ校)修士課程修了(比較文化専攻)。パリ高等社会科学研究院前期博士課程修了(文化人類学専攻)。博士(人間科学)。早稲田大学人間科学学術院教授・モンペリエ大学客員教授などを経て、現在早稲田大学名誉教授。著書に『ペストの文化誌』(朝日新聞社)、『英雄の表徴』(新評論)、『奇蹟と痙攣』(言叢社)、訳書に『ラルース世界宗教大図鑑』アンリ・タンク(原書房)、監修に『神話で訪ねる世界遺産』(ナツメ社)など多数。
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