2001年、日本中を震撼させた大阪教育大学附属池田小児童殺傷事件で、当時小学校2年生だった愛娘を亡くした本郷由美子さん。6年前の阪神・淡路大震災で被災し、本郷さんは強く「この子の命を大切に守り育てていかなければ」と誓った。それなのに――。
本郷さんは現在、受刑者やかなしみ、喪失を経験し、苦しんでいる人に寄り添う活動を全国で行っている。被害者遺族でありながら、なぜ今はケアをする側に回っているのか、苦しみの日々から何を見出したのかを綴った手記『かなしみとともに生きる~悲しみのグラデーション~』(主婦の友社)が10月31日に発売された。
娘さんと帰宅後に一緒にクッキーを焼く約束をしていたその日、カーラジオから流れてきたのは、刃物を持った男が学校に侵入し、低学年の子どもたちが多数傷を負っているニュースだった。事件現場で娘を必死に探すものの見つからず、やがて無言の対面を果たすことに。
突如として大切な人の命を奪われた本郷さんの時間はその日から止まったままで、生きる希望を失ってしまった。そんな本郷さんが出会ったのがグリーフケアである。
加害者への憎しみや怒り、経験したことのない感情や体の反応が起こる本郷さんの元に、13人が殺されたアメリカのコロンバイン高校銃乱射事件の被害者遺族からの手紙が届く。この遺族との手紙のやり取りで、いま自分に起こっていることが当たり前の反応であり、他者の助けを求めてもいい、自分なりの対処法を見つけていくことが必要であること、時間がかかることを理解する。
そして自分の気持ちをじっと聞いてくれる多くの友人・知人たちの存在が救いになり、本郷さんは本格的にグリーフケアを学び、他者のケアをすることになっていく。
このように、悲嘆、深いかなしみや苦悩といった意味があるグリーフに向き合い、丁寧に癒していくケアのことをグリーフケアというそうだ。
「精神的な『いのち』は、薬ではどうすることもできないことが多く、人とのつながり=いのちのつながりによってケアされるものではないか」
そんな思いから、本郷さんはいま、東京都台東区で「グリーフケアライブラリー ひこばえ」を開いている。そこには、悲しみを癒すグリーフケアの本や絵本が置かれている。
苦しみの渦中にいても「助けて」とうまく言えずに苦しむ全ての人に寄り添う1冊。
■本郷由美子さんプロフィール
グリーフパートナー歩み代表、下町グリーフサポート響和国「ひこばえ」代表
1995年阪神・淡路大震災で被災し、大阪府池田市に転居。2001年に大阪教育大学附属池田小児童殺傷事件で、当時小学校2年生だった愛娘を亡くす。翌年グリーフケアと出会い、心のケア活動を開始。2005年に精神対話士の資格を取得。その後、上智大学グリーフケア研究所で3年間学び、日本スピリチュアルケア学会スピリチュアルケア師(専門)認定を受けた。現在は、事件や事故の被害者、被災者、身近な人を亡くした方、終末期を迎える方、障がいを持つ方々など多様なかなしみに寄り添う活動のほか、グリーフケア、グリーフサポートを広める講演や研修、いのちの重さ・大切さを伝える講演や授業を行っている。岡山県 心と命のサポート事業 登録講師、公益財団法人全日本仏教会 第34期・第35期社会・人権審議会委員。著書に『虹とひまわりの娘』(講談社)。NHK『ハートネットTV』『事件の涙』、毎日新聞、「家庭画報」「致知」など多数のメディアで紹介されている。
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