朝晩はじょじょに過ごしやすい気温になり、読書もはかどる季節が近づいてきている。せっかくなら、あの著名人の生き方に大きな影響を与えた1冊を手に取ってみるのはどうだろう。
「& Premium(アンド プレミアム)」2022年10月号(マガジンハウス)では、巻頭特集「いい本との、出合いは大切。」で、より豊かな読書体験について取り上げている。
今回は、その中でも著名人の愛読書や読書遍歴がわかる「私をつくってきた、幾冊かの本との出合い」から、上白石萌音さんとヤマザキマリさんの思い出に残る1冊をそれぞれ紹介したい。
俳優・歌手の上白石萌音さんにとっての本とは、「遊び相手であり、頼みの綱。世界を広げてくれる、大事な友達」。同誌によると、上白石さんは図書館でつねに上限いっぱいの冊数まで借りていたほど、幼少期から読書が大好きだったそう。
そんな彼女のブックリストとして、16歳の頃に出会った『赤毛のアン』の原書『Anne of Green Gables』(BANTAM BOOKS USA)や24歳で出会った『老人と海』(新潮社)、『ジェイン・エア(上・下)』(岩波書店)などを挙げている。
中でも、『Anne of Green Gables』は友人が海外で買ってきてくれたもので、ずっと手元に置いていたという。学生時代は翻訳家に憧れていたという上白石さんは、なんとこの本の翻訳を手掛けることに。7月には、翻訳家・河野万里子さんとの共著『翻訳書簡 『赤毛のアン』をめぐる言葉の旅』(NHK出版)を上梓した。
ミュージカルでアンを演じたこともあり、読者、演者、翻訳者と多角的な視点でこの名作を見つめてきた彼女は、アンという少女についてこうコメントしている。
「想像力が豊かだからこそ、嬉しいことも悲しいことも倍になってしまう。アンは決して生きやすい子ではないかもしれません。でも、それだけ感情を揺らしながら多感に成長し、若い子たちを育てるためにその感性を使う、アンの生き方は素敵です」
代表作『テルマエ・ロマエ』(KADOKAWA)などで知られる、漫画家・文筆家・画家のヤマザキマリさんは、本を「自分の日本語を構築し、問題意識をかきたてられた書物」と、表現する。
本誌によると、ヤマザキさんの仕事場兼自宅には、リビングの天井から床までの巨大な本棚のほか、低いキャビネットにも本が並んでいるとのこと。とにかく本に囲まれた空間で日々過ごしている彼女のブックリストには、1冊目として、母に渡され6歳のときに読んだ『クマのプーさん プー横丁にたった家』(岩波書店)が挙がった。ディズニーキャラクターとしても親しまれている物語『クマのプーさん』の続編だ。
「音楽が聴こえてくるような、静止して物事を考えたいときに開く本。当たり前の日常を別の側面から捉えている視点に面白さを感じます。プーさんやイーヨーという、個性のある仲間と共生し合うコミュニティ観念が、私の中に深く入ってきたんだと思います」
さらに、17歳でイタリアに留学したヤマザキさんは、イタリア語を浴び続ける日々の中で日本語への飢餓感が加速していったという。安部公房の『砂の女』や三島由紀夫の『豊饒の海(全4巻)』(いずれも新潮社)など名だたる日本文学の名作たちを、水を飲むように吸収したそうだ。
「安部公房も三島由紀夫もマルケスも、人間社会の観察記録をフィクションにして書く人たちです」と、ヤマザキさん。特に安部公房は、『砂の女』で心を奪われたことをきっかけに、著作を片っ端から読み漁ったそうだ。自宅の本棚にも、彼の全集がずらりと並んでいる。
本誌の特集「私をつくってきた、幾冊かの本との出合い」では2人の他にも、金原ひとみさん、柚木麻子さん、坂本美雨さんら、各界で活躍する11人の思い出に残る本たちがブックリストとともに掲載されている。
応援しているあの人の生き方に影響を与えた本を読んでみると、また異なる角度から新たな魅力を発見できるかもしれない。
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